久野那美プロフィール|関西発の上演ユニット『階』を率いる劇作家の経歴・受賞歴・代表作

2026-03-28

久野那美劇作家プロフィールOMS戯曲賞せんがわ劇場演劇コンクール

久野那美プロフィール|関西発の上演ユニット「階」を率いる劇作家

久野那美さんは、関西を拠点に活動する劇作家・演出家です。自らの作品上演ユニット「階(〇〇の階)」を継続的に運営しながら、言葉そのものの手触りと、人物同士の関係性の変化を重視した舞台を発表してきました。上演のたびに編成を更新するユニット運営と、戯曲単体でも読める強度を両立している点が、久野さんの大きな特徴です。

本記事では、公開情報をもとに、久野さんの経歴・作風・受賞歴・代表作・近年の活動を整理します。

基本プロフィール

  • 名前:久野那美(くの・なみ)
  • 主な肩書:劇作家・演出家
  • 主な活動拠点:関西(大阪・神戸を中心)
  • 主宰:作品上演ユニット「階(〇〇の階)」

公式サイトでは、久野さんが「劇作家・演出家」であり、関西を拠点にした上演ユニット「階」を主宰していることが明記されています。公演ごとに参加者を募り、ユニット名を更新して活動する形式を長年続けている点は、日本の小劇場シーンでも独自性の高い実践です。

経歴

久野さんは高校時代に演劇活動を始め、その後、戯曲執筆と演出を軸に活動領域を広げてきました。公式サイト掲載の情報では、1990年代後半に「階」の前身となる活動が始まり、一定期間を経て2014年以降に現在の形での継続展開が明確になっています。

また、せんがわ劇場演劇コンクール受賞者インタビューでは、久野さん自身が創作姿勢について「個人の生きざま」よりも「関係性」を描くことに関心があると語っています。登場人物を固定的な人格として閉じ込めず、舞台上の関係の組み替えや見え方の反転を重視する考え方は、久野作品の設計思想を理解するうえで重要です。

作風の特徴

関係性を中心に据えるドラマ設計

久野さんの発言で一貫しているのは、「個」だけを追いかけるよりも、人物同士の関係の変化や不均衡に注目する姿勢です。この視点により、作品は心理描写に閉じず、舞台空間全体の力学として立ち上がります。誰かにとっての日常が、別の誰かにとっては非日常であるという前提が、会話のズレや沈黙の意味を立体化しています。

詩性と具体性の同居

久野作品は、比喩や余白を含む言葉遣いが魅力ですが、同時に上演時には観客が追える具体性も確保されています。審査員・観客に「分かりやすかった」という受け止めが示された事例は、抽象性と伝達性の両立が成功している証拠です。難解さを目的化せず、観客が自分の経験を重ねられる設計になっている点が、上演を重ねるほど評価される理由です。

ユニット運営と作品更新の一体化

「階」は公演ごとに編成を変える運営形式を採っており、再演でもキャストや上演環境に応じて作品が更新されます。たとえば『パノラマビールの夜』は初演から約20年後に再演され、時代差を抱えたまま作品を再起動する形で注目を集めました。固定メンバー制ではない運営だからこそ、作品の核と上演の現在性を同時に保てる点が強みです。

受賞歴・評価(主要)

公開情報で確認しやすい主な実績は次のとおりです。

  • 『たとえば零れたミルクのように』:第4回テアトロ・イン・キャビン戯曲賞 佳作
  • 『パノラマビールの夜』:第5回OMS戯曲賞 佳作
  • 第12回せんがわ劇場演劇コンクール:グランプリ(階/缶々の階)

戯曲賞系の評価と、上演単位でのコンクール評価の両方を獲得している点は、久野さんの活動が「書く力」と「上演化する力」の両面で支持されていることを示しています。

戯曲図書館に掲載されている代表作

『パノラマビールの夜』は、壊れていく星を見ようと集まった人々の語りを通じて、共有できない記憶同士が一瞬だけ交差する構図を描いた作品です。久野作品の入口として読みやすく、受賞歴ともつながる代表作です。

『たとえば零れたミルクのように』は、日常の裂け目を丁寧に可視化する筆致が際立つ一本です。言葉の温度差が人物関係に与える影響が細かく織り込まれており、久野さんの作風を理解するうえで外せません。

また『ここはどこかの窓のそと』『満月の夜のことでした』は、近年の読者・上演者にもアクセスしやすい作品で、短〜中編としての可搬性と、詩的な会話劇の魅力を両立しています。

近年の公式活動情報

近年の公開情報では、久野さん個人の発信と「階」名義の活動が並行して続いています。note上では戯曲販売・公開やテキスト発信が継続されており、複数作品が2020年代に入ってもアップデートされています。上演だけでなく、テキストへのアクセス導線を整えている点は、若手団体や教育現場で読まれやすい環境づくりとしても重要です。

さらに、せんがわ劇場演劇コンクール関連の情報からは、受賞後の再構成・再上演を含め、単発で終わらない企画運営を志向していることがうかがえます。関西発の創作実践を、東京を含む他地域へ接続していく動きは、今後の展開でも注目点です。

読み解きのポイント

設定説明より会話の重心を追う読み方

久野作品は、最初に世界観のルールをすべて説明するタイプではありません。冒頭で情報を取り切ろうとするより、誰がどの言葉に反応し、どこで会話がすれ違うかを追うほうが、作品の核に早く到達できます。説明不足に見える部分も、関係の揺れを浮かび上がらせる設計として読むと、理解が深まります。

再演情報とあわせて読む立体的な楽しみ方

同じ戯曲でも、再演時のキャスト構成や上演空間によって印象が変わる点は、久野作品の面白さです。テキストを先に読み、次に上演情報やインタビューを確認すると、台詞のニュアンスが立体的に見えてきます。戯曲と上演記録を往復する読み方は、久野さんの創作方法と特に相性が良いです。

まとめ

久野那美さんは、関西小劇場の実践を土台に、戯曲執筆と上演運営を一体化させてきた劇作家・演出家です。関係性中心のドラマ設計、詩性と具体性の同居、そして公演ごとの編成更新という方法論によって、作品を時代に合わせて再起動し続けています。

戯曲図書館で読める代表作は、久野さんの作家性を段階的に理解するのに適しています。まずは『パノラマビールの夜』と『たとえば零れたミルクのように』を読み、その後に『ここはどこかの窓のそと』『満月の夜のことでした』へ進むと、言葉と関係性の設計思想がより明確に見えてきます。


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