脚本の読み方・分析ガイド

作品を深く理解し、素晴らしい舞台を作るための第一歩

更新日: 2024年1月1日読了時間: 約15分

なぜ脚本分析が重要なのか

脚本は演劇の設計図です。正しく読み解くことで、作者の意図を理解し、 観客に伝わる演技・演出が可能になります。

演者にとって

役の内面を理解し、説得力のある演技ができる

演出家にとって

作品の核心を捉え、統一感のある演出が可能

スタッフにとって

作品世界を共有し、一体感のある舞台を作れる

脚本分析の5つのステップ

初読み - 全体を把握する

まず通して読み、物語の全体像をつかみます

やること

  • 1メモを取らずに最後まで読む
  • 2第一印象を大切にする
  • 3感じたことを書き留める
  • 4全体の雰囲気をつかむ
  • 5上演時間を概算する

ポイント

批判的にならず、素直な気持ちで読むことが大切です。観客として楽しむつもりで。

推奨時間:60-90分程度の作品なら30分以内で読む

セリフの3層構造を理解する

セリフには表面的な意味だけでなく、複数の層があります。 これらを理解することで、深みのある演技が可能になります。

表面的な意味

セリフの文字通りの意味

例:

「今日はいい天気だね」→ 天気について話している
「お腹すいた」→ 空腹を訴えている
「もう帰る」→ 帰宅の意思表示

サブテキスト

セリフの裏にある本当の意味

例:

「今日はいい天気だね」→ 会話を始めたい、気まずさを解消したい
「お腹すいた」→ 一緒に食事に行きたい、かまってほしい
「もう帰る」→ 引き止めてほしい、怒っている

行動目的

そのセリフで何をしようとしているか

例:

「今日はいい天気だね」→ 相手との距離を縮める
「お腹すいた」→ 相手を誘う、注目を集める
「もう帰る」→ 相手を試す、決別する

セリフ分析の実践

一つのセリフを選んで、以下の質問に答えてみましょう:

  1. 1. このセリフの前に何が起きた?
  2. 2. なぜこのセリフを言う?
  3. 3. 相手に何を期待している?
  4. 4. 本当に言いたいことは何?
  5. 5. このセリフの後、どうなってほしい?

ト書きの読み方と解釈

ト書きは作者からの重要なヒントです。 ただし、それに縛られすぎず、創造的に解釈することも大切です。

動作指示

(立ち上がる)

感情の高まり、決意、逃避などを表現

演技のヒント:なぜ立ち上がるのか、内面を考える

感情指示

(悲しそうに)

表現の手がかり、ただし固定しすぎない

演技のヒント:「悲しい」にも様々な表現がある

間の指示

(沈黙)

言葉にできない感情、緊張感

演技のヒント:沈黙の間も演技は続いている

場面説明

(夕暮れ時、公園のベンチ)

雰囲気や心情を暗示

演技のヒント:時間帯や場所が与える影響を考慮

人物相関図の作り方

基本の作り方

  1. 1
    登場人物をリストアップ

    主要人物から脇役まですべて

  2. 2
    関係性を線で結ぶ

    家族、恋愛、友人、敵対など

  3. 3
    感情や状態を記号化

    →(一方的)、⇄(相互)、×(対立)

  4. 4
    変化を時系列で

    幕ごとに関係の変化を追う

記入する情報

各人物について

  • • 名前と年齢
  • • 職業や立場
  • • 主な性格特徴
  • • 目的や欲求

関係性について

  • • 関係の種類
  • • 力関係(上下)
  • • 感情の方向
  • • 秘密や裏切り

💡 デジタルツール:draw.io、Miro、Canvaなどを使うと、きれいな相関図が作れます。 手書きの場合は、大きな紙を使って余白を十分に取りましょう。

脚本分析ワークシート

このワークシートを使って、実際に脚本を分析してみましょう。 すべての項目を埋めることで、作品の理解が深まります。

脚本読みでよくある間違い

❌ 表面的な読み

セリフを文字通りにしか理解せず、深層の意味を見逃してしまう。

対策:「なぜこのセリフを言うのか」を常に問いかける

❌ 固定観念での解釈

有名作品の既存の演出に縛られ、新しい解釈ができない。

対策:まず自分なりの解釈を作ってから、他の演出を参考にする

❌ 部分的な理解

自分の役やシーンだけを読み、全体の流れを把握していない。

対策:必ず全体を通して読み、自分の役の位置づけを理解する

❌ ト書きの無視

セリフだけを読んで、ト書きの重要な情報を見落とす。

対策:ト書きも作者からの大切なメッセージとして丁寧に読む

効果的な読み合わせの方法

第1回読み合わせ

作品との出会い、全体像の共有

  • • 配役なしで順番に読む
  • • 感想を自由に話し合う
  • • 疑問点をリストアップ
  • • 作品の第一印象を大切に

第2回読み合わせ

役の理解、関係性の確認

  • • 配役を決めて読む
  • • キャラクターについて議論
  • • 関係性を整理
  • • 疑問を解決していく

第3回読み合わせ

演出プランの共有、イメージ統一

  • • 演出の方向性を説明
  • • 各シーンの狙いを共有
  • • 舞台イメージの確認
  • • 稽古計画の説明

本読み稽古

セリフを体に入れる、感情を探る

  • • 感情を込めて読む
  • • 相手との掛け合い重視
  • • テンポや間を意識
  • • 繰り返し練習

脚本分析マスターへの道

📚 たくさんの作品を読む

様々なジャンル、時代、作者の作品を読むことで、分析力が向上します。 月に最低1本は新しい脚本を読む習慣をつけましょう。

🎭 実際の舞台を観る

脚本がどう舞台化されるかを観察することで、読み方が深まります。 同じ作品の異なる演出を比較するのも勉強になります。

✍️ 分析ノートを作る

読んだ作品の分析を記録しておくと、自分の成長が実感できます。 演出アイデアや気づきも書き留めておきましょう。

👥 仲間と議論する

同じ作品でも人によって解釈が異なります。 議論することで新しい視点が得られ、理解が深まります。

次のステップ

脚本の読み方を学んだら、実際に作品を選んで分析してみましょう。 素晴らしい作品があなたを待っています。

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