松原俊太郎 プロフィール|言葉の密度で現在をえぐる純粋劇作家
松原俊太郎さんは、劇団の主宰や自作演出を前提にせず、テキストそのものの強度で現代演劇の前線に立ってきた劇作家です。2015年の『みちゆき』、2019年の『山山』を大きな節目にしながら、地点や小野彩加・中澤陽(スペースノットブランク)らとの協働を通じて、上演のたびに異なる輪郭を持つ言葉を送り出してきました。
本記事では、松原さんの経歴、作風、受賞歴、戯曲図書館で読める代表作、そして2025年から2026年にかけて確認できる近年の活動を、公開情報に基づいて整理します。
基本プロフィール
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 名前 | 松原俊太郎(まつばら しゅんたろう) |
| 生年 | 1988年 |
| 出身 | 熊本県 |
| 居住・活動拠点 | 京都 |
| 主な肩書 | 劇作家・作家 |
| 関連ページ | 戯曲図書館の著者ページ |
経歴の要点
松原さんは神戸大学経済学部を卒業後、小説を書き始めたのちに劇作へ向かいました。演劇との距離が最初から近かったわけではなく、地点の上演や関連プログラムとの出会いをきっかけに、戯曲を書く人として輪郭を定めていった経緯が知られています。
転機になったのは、2015年に処女戯曲『みちゆき』で第15回AAF戯曲賞大賞を受賞したことです。さらに2019年には『山山』で第63回岸田國士戯曲賞を受賞し、同世代の中でもとくに注目される劇作家の一人になりました。
松原さんの特徴は、自身の劇団を持たず、劇作家として作品を他者に託すかたちで活動を広げてきた点にあります。地点との継続的な協働に加えて、近年はスペースノットブランクとの創作でも存在感を強めています。ひとつの集団の内部言語に閉じるのではなく、異なる演出家やカンパニーにテキストを差し出しながら、その都度別の振動を生むタイプの書き手です。
作風の特徴
松原俊太郎さんの戯曲は、筋をわかりやすく運ぶ説明的な会話よりも、言葉が発せられる場の圧力や、人物同士の関係の歪みを前面に出す傾向があります。台詞は一見すると日常会話に近いのに、読んでいくうちに足場がずれていく感覚があり、その揺れが作品の緊張を生みます。
また、比喩や飛躍を多用しながらも、単なる観念劇には留まりません。家族、土地、歴史、共同体、そして現在の日本語が抱える暴力性や空虚さが、会話の手触りのなかでじわじわ浮かび上がります。題材の大きさを声高に主張するのではなく、場面の粘度を高めることで現実の裂け目を見せる作風だと言えます。
そのため松原作品は、派手な事件の有無よりも、俳優がどのような速度で言葉を受け渡すかによって印象が大きく変わります。読む戯曲としての密度と、上演されたときの身体性の両方を備えている点が魅力です。
戯曲図書館に掲載されている代表作
戯曲図書館で松原俊太郎さんの作品をたどるなら、まずは次の2本が入口になります。
-
- 第15回AAF戯曲賞大賞の受賞作です。初期から、会話のずれと風景の不穏さを組み合わせる松原さんの持ち味がはっきり出ています。
-
- 第63回岸田國士戯曲賞受賞作です。土地の記憶、共同体のひずみ、現代日本の不安が濃く結びついた代表作で、松原作品を語るうえで外せません。
この2本を並べてみると、初期から一貫している言葉の硬質さと、作品ごとに拡張されていくスケールの両方が見えてきます。まず『みちゆき』で声の運びをつかみ、その後に『山山』へ進むと、松原さんの劇作の強度がよりわかりやすいです。
受賞歴と評価
松原さんのプロフィールを語るうえで、少なくとも次の受賞歴は押さえておきたいです。
- 2015年 第15回AAF戯曲賞大賞(『みちゆき』)
- 2019年 第63回岸田國士戯曲賞(『山山』)
AAF戯曲賞大賞で鮮烈に登場し、岸田國士戯曲賞で決定的な評価を受けた流れは、松原さんが「新しい才能」から「現代演劇の中心的な劇作家」へ移っていく過程そのものでもあります。さらに2024年度セゾン・フェローIに選ばれていることからも、単発の受賞で終わらない持続的な期待を集めていることがわかります。
近年の活動情報(2025年11月・2026年9月)
近年の公開情報としては、2025年11月14日から16日に京都芸術センターで上演された『インポッシブル・ギャグ』のリーディング公演がまず重要です。京都芸術センターの案内では、この作品を「構想3年」「集大成的戯曲」と位置づけており、松原さん自身もコメントで集大成と述べています。近年の到達点を示す作品として注目してよいでしょう。
さらに、2026年9月19日から21日には豊岡演劇祭2026で、松原俊太郎さん作・小野彩加さん/中澤陽さん演出の新作『日本の会話』が上演予定です。豊岡演劇祭の公式ページでは、松原さんにとって初の短篇戯曲であり、スペースノットブランクとの協働では7作目にあたることが案内されています。2024年の『ダンスダンスレボリューションズ』、2025年の『魔法使いの弟子たちの美しくて馬鹿げたシナリオ』に続く流れとしても位置づけられており、現在進行形の創作動向を追ううえで見逃せません。
2024年時点では、スペースノットブランクのインタビュー記事で、松原さんが2024年度セゾン・フェローIとして紹介されています。受賞や再演の実績だけではなく、新作執筆と共同制作の場で継続的に更新されている点に、今の松原さんの充実ぶりがあります。
まとめ
松原俊太郎さんは、戯曲を自分の看板劇団のためだけに書くのではなく、他者の上演実践に開きながら、日本語の会話そのものを鋭く鍛えてきた劇作家です。『みちゆき』での登場から『山山』での評価確立を経て、2025年の『インポッシブル・ギャグ』、2026年9月の『日本の会話』へと、活動は現在も更新中です。
戯曲図書館で読むなら、まずは みちゆき と 山山 の2本を押さえるのがおすすめです。松原俊太郎さんの言葉が、現代演劇のなかでどのように切実さを獲得してきたのかをつかみやすくなります。
参考文献
この記事で紹介した戯曲
Written by
戯曲図書館 編集部
演劇経験者が運営する戯曲検索サービス「戯曲図書館」の編集チームです。 脚本選びのノウハウ、演劇業界の最新情報、公演レポートなどを発信しています。
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