上演許可の取り方ガイド|戯曲を上演するための手続きと注意点
2026-02-08
はじめに
「この戯曲を上演したい!」と思ったとき、最初にやるべきことは上演許可の取得です。
戯曲は著作物であり、上演するには原則として著作権者の許可が必要です。しかし、初めて上演許可を取る方にとっては「誰に連絡すればいいの?」「お金はかかるの?」など、分からないことだらけでしょう。
この記事では、戯曲の上演許可に関する基礎知識から具体的な手続きまでを解説します。
著作権の基礎知識
戯曲と著作権
戯曲は「言語の著作物」として著作権法で保護されています。著作権には以下の権利が含まれます:
| 権利 | 内容 | |------|------| | 上演権 | 公に上演する権利 | | 複製権 | 台本をコピーする権利 | | 翻案権 | 内容を改変する権利 |
つまり、他人の書いた戯曲を上演するには、著作権者の上演権の許諾を得る必要があります。
著作権の保護期間
日本の著作権法では、著作権は著作者の死後70年まで保護されます(2018年の法改正により、50年から70年に延長)。
保護期間が満了した作品は「パブリックドメイン」となり、自由に上演できます。ただし、翻訳作品の場合は翻訳者の著作権が別途存在するので注意が必要です。
上演許可が必要なケース・不要なケース
許可が必要なケース
- 劇場やホールでの公演
- 文化祭での上演(※後述の例外あり)
- 演劇コンクール
- 有料・無料を問わず、公に上演する場合
許可が不要なケース(著作権法第38条)
以下のすべての条件を満たす場合は、著作権者の許可なく上演できます:
- 非営利であること(入場料を取らない)
- 無報酬であること(出演者にギャラを払わない)
- 聴衆から料金を受けないこと
ただし、学校の文化祭でも入場料を取る場合は許可が必要です。また、演劇コンクールは主催者から賞金が出るため、この例外に該当しないと解釈されるケースがあります。
重要:条件を満たすかどうか判断に迷う場合は、念のため許可を取ることをおすすめします。著作権者に連絡すること自体は無料ですし、トラブルを未然に防げます。
上演許可の取り方:ステップガイド
Step 1:著作権者(権利者)を特定する
まず、誰に連絡すれば良いかを確認します。
確認先の優先順位:
- 戯曲が掲載されている書籍の奥付 — 出版社の連絡先が記載されています
- 劇作家の公式サイト・SNS — 連絡方法が書かれていることがあります
- 劇作家が所属する劇団のサイト — 事務局が窓口になることが多いです
- 日本劇作家協会 — 会員の作品についての問い合わせを受け付けています
- 出版社への問い合わせ — 著作権者への取り次ぎをしてくれる場合があります
Step 2:上演許可の申請
連絡先が分かったら、以下の情報をまとめて連絡しましょう。
申請に含める情報:
- 上演する作品名
- 上演団体名(劇団名・学校名など)
- 上演日時・期間
- 上演場所(会場名)
- 公演回数
- 入場料の有無と金額
- 想定観客数
- 脚本の改変の有無(改変する場合はその内容)
- 連絡先(メールアドレス・電話番号)
メールの例文:
件名:戯曲「○○○○」の上演許可のお願い
○○様
突然のご連絡失礼いたします。○○劇団の○○と申します。
○○様の戯曲「○○○○」を以下の通り上演させていただきたく、ご許可をお願い申し上げます。
■上演情報 作品名:○○○○ 上演団体:○○劇団 公演日程:2026年○月○日〜○月○日 会場:○○ホール 公演回数:○回 入場料:○○円(または無料) 想定観客数:各回○名 脚本の改変:なし(またはありの場合は具体的に記載)
ご多忙のところ恐れ入りますが、ご検討のほどよろしくお願いいたします。
Step 3:条件の確認と合意
著作権者から返答があったら、**上演条件(上演料、クレジット表記、改変の可否など)**を確認し、合意します。
Step 4:上演料の支払い
上演料が発生する場合は、指定された方法で支払います。
Step 5:公演後の報告
公演後に、観客数や公演の様子を報告すると丁寧です。今後の関係構築にもつながります。
上演料の相場
上演料は著作権者や作品によって異なりますが、一般的な目安は以下の通りです:
| 区分 | 相場 | |------|------| | アマチュア公演(小規模) | 1ステージあたり 5,000〜30,000円 | | アマチュア公演(中規模) | 1ステージあたり 10,000〜50,000円 | | 学校演劇 | 無料〜10,000円程度 | | プロ公演 | チケット収入の一定割合(5〜12%程度) |
※あくまで目安です。実際の金額は著作権者との交渉で決まります。
学校演劇での上演許可
授業の一環としての上演
学校の授業(演劇の授業、国語の授業など)の中で戯曲を上演する場合は、著作権法第35条(学校その他の教育機関における複製等)の範囲内であれば、許可なく上演できる場合があります。
文化祭での上演
文化祭は「授業」とは異なる扱いになる可能性があります。入場料の有無に関わらず、著作権者に事前に連絡することを強くおすすめします。
多くの劇作家は、学校での上演に対して好意的で、無料または低額で許可してくれることが多いです。
演劇コンクール
高校演劇のコンクール(地区大会・県大会・全国大会)では、主催者側で上演許可の手続き方法を指定していることがあります。顧問の先生を通じて確認しましょう。
よくあるトラブルと対処法
「著作権者に連絡がつかない」
出版社や劇団に問い合わせても連絡がつかない場合は、以下を試してみてください:
- 日本劇作家協会に相談する
- 文化庁の「裁定制度」を利用する(著作権者不明の場合の法的手続き)
「脚本を一部変更したい」
脚本の改変(カットや追加)は翻案権に関わるため、上演許可とは別に許可が必要です。上演許可の申請時に、改変の内容を具体的に伝えて許可を得ましょう。
「許可を取らずに上演してしまった」
著作権侵害にあたる可能性があります。気づいた時点で速やかに著作権者に連絡し、事情を説明して謝罪しましょう。
まとめ
上演許可の手続きは、一見面倒に感じるかもしれません。しかし、これは劇作家の創作活動を支え、演劇文化を持続可能にするための大切な仕組みです。
劇作家に「あなたの作品を上演したい」と連絡すること自体が、何より嬉しいメッセージになります。丁寧に手続きを進めて、素晴らしい公演を実現してください。
戯曲図書館では、さまざまな戯曲を検索・閲覧できます。気になる作品を見つけたら、ぜひ上演にチャレンジしてみてください。
この記事は一般的な情報提供を目的としており、法的助言ではありません。具体的なケースについては、専門家にご相談ください。
