戯曲の読み方入門|台本を読むときに押さえるべき5つのポイント

2026-02-08

演劇知識初心者向け戯曲の読み方ガイド

はじめに

「戯曲を読んでみたいけど、小説と違って読み方がよく分からない」

そんな声をよく耳にします。戯曲は小説とは異なる独自の形式を持つ文学作品であり、読み方にもコツがあります。

この記事では、戯曲を初めて読む方に向けて、押さえるべき5つのポイントを解説します。


戯曲とは何か?

戯曲(ぎきょく)とは、舞台で上演されることを前提に書かれたテキストのことです。「台本」「脚本」とも呼ばれます。

小説との主な違い

| | 小説 | 戯曲 | |---|---|---| | 表現方法 | 地の文+会話文 | セリフ+ト書き | | 視点 | 語り手の視点あり | 語り手なし(客観的) | | 描写 | 心理描写が豊富 | 行動と発言のみ | | 完成形 | テキストそのもの | 上演されて完成 |

小説では「彼は悲しかった」と書けますが、戯曲では登場人物の行動やセリフから悲しみを読み取る必要があります。


ポイント1:ト書きを丁寧に読む

ト書きとは?

ト書き(とがき)とは、セリフ以外の部分に書かれた舞台の状況や登場人物の動作に関する指示のことです。

例:

(間) (立ち上がり、窓の方を見る) (沈黙。時計の音だけが聞こえる)

なぜト書きが重要か

ト書きには、作者が意図した場面の空気感、登場人物の感情、時間の流れが込められています。セリフだけを追うと、作品の半分しか読めていないことになります。

特に注目すべきト書き:

  • 「間」「沈黙」 — 言葉にならない感情がここにある
  • 動作の指示 — 何をしているかで心理状態が分かる
  • 舞台装置の説明 — 物語の世界観を理解する手がかり

ポイント2:声に出して読む

戯曲は声に出されることを前提に書かれたテキストです。黙読だけでは伝わらないリズムや間が、声に出すことで見えてきます。

一人で読む場合

一人で複数の役を読み分けてみましょう。完璧な演技をする必要はありません。声に出すことで、以下のことが分かります:

  • セリフのテンポ — 速いやりとりか、ゆっくりした会話か
  • 言葉の響き — 音としての美しさ、リズム
  • 感情の流れ — どこで感情が高まり、どこで静まるか

複数人で読む場合(読み合わせ)

友人や仲間と役を分担して読む「読み合わせ」は、戯曲の魅力を最も感じられる方法です。相手のセリフを聞いて反応する中で、テキストに書かれていない生きた対話が生まれます。


ポイント3:登場人物を分析する

人物相関図を書いてみる

複数の登場人物が出てくる戯曲では、人物同士の関係を図にしてみましょう。

確認するポイント:

  • 誰と誰が対立しているか
  • 誰と誰が味方同士か
  • 関係性は物語の中で変化するか

登場人物の「欲求」を探る

すべての登場人物には「欲求(want)」があります。

  • この人物は何を求めているのか?
  • その欲求を阻んでいるものは何か?
  • 欲求は最終的に満たされるのか?

この3つの質問に答えることで、物語の構造が見えてきます。

「言っていること」と「思っていること」のギャップ

戯曲の面白さは、登場人物が言葉では本音を隠すところにあります。

例えば「別に怒ってないよ」というセリフ。文脈によっては、明らかに怒っていることが分かります。このセリフの表面と裏にある感情のギャップを読み取ることが、戯曲を深く楽しむコツです。


ポイント4:構造を意識する

起承転結を探す

多くの戯曲は、大まかに以下の構造を持っています:

  1. 導入(設定の提示) — 登場人物と状況が示される
  2. 展開(葛藤の深まり) — 問題が複雑化していく
  3. クライマックス(転換点) — 物語が決定的に動く瞬間
  4. 結末(解決または未解決) — 物語がどう閉じるか

場面転換に注目する

戯曲は「幕」や「場」で区切られていることが多いです。場面が変わるとき、時間・場所・状況のどれが変化しているかを確認しましょう。

繰り返されるモチーフ

優れた戯曲には、繰り返し登場する言葉やイメージ(モチーフ)があります。最初は何気なく使われた言葉が、終盤で全く違う意味を持つ——そんな仕掛けを見つけると、戯曲を読む楽しさが倍増します。


ポイント5:「余白」を想像する

舞台を頭の中に描く

戯曲を読みながら、頭の中に舞台を思い浮かべてみましょう

  • 登場人物はどこに立っているか?
  • どんな表情をしているか?
  • 部屋の中はどんな雰囲気か?

この「頭の中の上演」が、戯曲の最も自由で豊かな楽しみ方です。

書かれていないことを想像する

戯曲には、小説のような詳細な心理描写がありません。だからこそ、読者には想像する自由があります。

  • この沈黙の間、この人物は何を考えているのだろう?
  • この場面の前に、何があったのだろう?
  • この物語の後、登場人物はどうなるのだろう?

書かれていない部分を想像することこそ、戯曲を読む醍醐味です。


おすすめの読み方ステップ

  1. 1回目:まず通して読む。ストーリーの全体像を掴む
  2. 2回目:声に出して読む。セリフのリズムと間を感じる
  3. 3回目:ト書きと構造に注目して読む。作者の意図を探る
  4. 余裕があれば:実際の上演映像を観る。テキストとの違いを楽しむ

まとめ

戯曲は、読者に「想像する力」を求める文学形式です。セリフとト書きという限られた情報から、登場人物の感情・人間関係・物語の世界を立ち上げる——その能動的な読書体験こそが、戯曲の最大の魅力です。

戯曲図書館には、さまざまなジャンル・スタイルの戯曲が掲載されています。この記事で紹介したポイントを意識しながら、ぜひ作品を探してみてください。


この記事は戯曲図書館編集部が執筆しました。