つかこうへい|熱量と速度の劇作家

2026-02-08

劇作家紹介つかこうへい岸田國士戯曲賞演劇小劇場

つかこうへい(本名:金峰雄、김봉웅)は、1970年代から2000年代にかけて日本演劇に巨大な足跡を残した劇作家・演出家です。圧倒的な熱量と速度で観客を圧倒する「つか芝居」は、多くの俳優を育てました。

プロフィール

  • 生没年:1948年4月24日 - 2010年7月10日
  • 出身地:福岡県嘉穂郡(現・嘉麻市)
  • 学歴:慶應義塾大学文学部仏文科卒業
  • 主な受賞歴:岸田國士戯曲賞(1974年『熱海殺人事件』)、直木賞(1982年『蒲田行進曲』)
  • 劇団:つかこうへい事務所

経歴

在日韓国人として福岡に生まれ、慶應義塾大学に進学。大学時代から劇作を始め、1974年に『熱海殺人事件』で岸田國士戯曲賞を受賞します。26歳でした。

1980年代には小説『蒲田行進曲』で直木賞を受賞し、映画化もされて大ヒット。演劇と文学の両方の世界で成功を収めました。

しかし1994年、突如として演劇活動の引退を宣言。その後、2000年に演劇活動を再開し、新たな俳優たちとともに精力的に作品を発表しました。

2010年、肺がんのため62歳で逝去。死の直前まで作品の改訂を続けていたと伝えられています。

代表作品

  • 『熱海殺人事件』(1973年初演):刑事と犯人の取り調べの中で、事件の真相と人間の業が浮かび上がる代表作。何十回も改訂・再演された
  • 『蒲田行進曲』(1980年):映画撮影所を舞台にした大部屋俳優たちの物語。直木賞受賞後に映画化
  • 『飛龍伝』(1976年):全学連の闘争をモチーフにした青春群像劇
  • 『いつも心に太陽を』(1981年):広島の被爆をテーマにした作品
  • 『銀幕の果てに』(1989年)

「つか芝居」の特徴

圧倒的な声量とテンポ

つか芝居の最大の特徴は、役者が全力で叫ぶようなセリフと、息つく間もないテンポです。静かな会話劇とは対極にある、肉体と声のぶつかり合い。

稽古場での「口立て」

つかこうへいは、事前に完成された台本を渡さず、稽古場で役者の個性を見ながら「口立て」(口頭でセリフを伝え、その場で作り上げていく手法)で作品を創りました。

これにより、役者一人ひとりの身体に合ったセリフが生まれ、「台本を演じる」のではなく「役者が生きる」舞台が出来上がりました。

在日コリアンとしてのテーマ

つかこうへいは在日韓国人二世として、差別や偏見、アイデンティティの問題を作品の深層に据えていました。それを直接的なメッセージとしてではなく、エンターテインメントの中に織り込む手法は、多くの評論家が指摘するところです。

笑いと涙

つか芝居は、爆笑の直後に号泣させるような感情の振れ幅があります。笑いで観客の心を開き、そこに一気に感情を流し込む——この技術において、つかこうへいは天才的でした。

つかこうへいが育てた俳優たち

つかこうへいの稽古場は、厳しいことで知られました。しかし、そこから多くの優れた俳優が巣立っていきました。

風間杜夫、平田満、加藤健一、石丸謙二郎ら、つかの稽古場を経て日本の舞台・映像で活躍する俳優は数多くいます。

つかこうへいを読む

つかこうへいの戯曲は、上演台本と活字で刊行されたものとで異なることが多く(稽古場で変化し続けるため)、その点も特徴的です。

  • 角川文庫版の『熱海殺人事件』『蒲田行進曲』が入手しやすい
  • 小説版『蒲田行進曲』は直木賞受賞作として広く読まれている

つかこうへいの演劇は、テキストだけでは伝わらない部分が大きいジャンルです。映像記録が残っている公演もありますので、機会があればぜひ映像でも体験してみてください。