舞台音響・効果音の作り方ガイド

2026-02-08

ガイド音響舞台技術演劇知識実用

舞台音響は、照明と並んで演劇の空間を作り出す重要な要素です。効果音やBGMの使い方から、実際のオペレーションまで解説します。

舞台音響の役割

  1. 場面の説明:雨の音、車の音、鳥のさえずりなどで場所や時間を表現
  2. 感情の増幅:BGMで感情的な場面を強調
  3. 場面転換:暗転中の音楽でシーンをつなぐ
  4. リアリティの付与:電話の音、ドアベルなど芝居のきっかけになる音

効果音の種類

写実音(リアルサウンド)

実際の音を再現するものです。

  • 環境音:雨、風、雷、波、虫の声
  • 生活音:ドアの開閉、電話、食器の音
  • 交通音:車、電車、飛行機

抽象音(サウンドエフェクト)

感情や心理状態を表現する音です。

  • 不安を煽る低い持続音(ドローン)
  • 回想シーンのきらめくような高音
  • 心臓の鼓動(緊張シーン)

BGM(バックグラウンドミュージック)

場面の雰囲気を作る音楽です。

  • 既存の楽曲を使う場合は著作権に注意が必要
  • オリジナル楽曲の制作が理想
  • ロイヤリティフリーの素材も選択肢

著作権について

舞台でBGMや楽曲を使用する際は、著作権法を遵守する必要があります。

JASRAC管理楽曲を使う場合

JASRAC(日本音楽著作権協会)に管理されている楽曲を上演中に使う場合、JASRACへの申請と使用料の支払いが必要です。

  • 申請は公演の5日前までに行う(JASRACウェブサイトから手続き可能)
  • 使用料は入場料・座席数・公演回数によって変わる
  • 入場無料の公演でも申請は必要

著作権フリーの素材を使う場合

  • 「ロイヤリティフリー」と「著作権フリー」は異なるので利用規約をよく確認する
  • クリエイティブ・コモンズライセンスの場合、ライセンス条件(表示、非営利など)を守る
  • 購入した素材は規約に基づいて使用する

自作する場合

  • 最も安全な方法。DAW(音楽制作ソフト)で自作する
  • GarageBandなど無料のDAWでも十分に制作可能
  • 知人の音楽家に依頼する場合は、権利の取り扱いを書面で確認する

効果音の入手方法

  1. 自分で録音する:スマートフォンでも可。ドアの開閉、足音などは自作が確実
  2. フリー素材サイト:利用規約を確認の上で使用
  3. 効果音CD/データ集:舞台用の効果音集が市販されている
  4. DAWで作る:シンセサイザーで抽象的な音を作成

音響プランの作り方

1. 台本から音のリストを作る

台本を読み、必要な音をすべてリストアップします。

No.  タイミング            音の内容          長さ
M-1  開演前              開演前BGM         5分
SE-1 第1場 冒頭          朝の鳥の声        フェードイン
SE-2 田中「誰だ?」の後   ドアチャイム       1回
M-2  第1場→第2場 転換    転換曲            30秒
SE-3 第2場 冒頭          雨の音            シーン中ループ

2. 音素材を準備する

リストに基づいて音素材を集め、編集します。

  • 音量レベルを揃える
  • 必要に応じてフェードイン・フェードアウトを付ける
  • ループ素材はつなぎ目が自然か確認する

3. キューシート(きっかけ表)を作る

照明のキューシートと同様に、音の出し入れのタイミングを台本に書き込みます。

4. スピーカーの配置を決める

  • 客席の両サイドに置く(ステレオ配置)のが基本
  • 環境音は後方スピーカーから出すと臨場感が増す
  • 小劇場ではスピーカー2台でも十分

オペレーション(音出し)のコツ

フェードのスピード

  • フェードイン:3〜5秒が標準。ゆっくり入ることで自然に聞こえる
  • フェードアウト:場面転換時は3秒程度。感情的なシーンでは7〜10秒かけてゆっくり
  • カットアウト(即時停止):衝撃的な場面転換で使う

音量バランス

  • 最も大切なこと:セリフが聞こえること。BGMや効果音でセリフが埋もれないように
  • ゲネプロで客席で聞いて音量を最終調整する
  • 静かなシーンの後に大きな音を出す場合、音量差に注意

本番でのオペレーション

  • 台本を見ながら、キューに合わせて正確に操作する
  • 稽古に参加して、役者のセリフのテンポを体に覚え込ませる
  • トラブル(音が出ない等)に備えてバックアップを用意する

よくある失敗と対策

  • BGMが大きすぎてセリフが聞こえない:ゲネプロで客席中央・後方から確認
  • 音のきっかけがズレる:稽古に最低3回は参加して体で覚える
  • 転換曲の長さが足りない:転換にかかる時間を測って、余裕を持った長さにする
  • 著作権の問題:公演後にトラブルになるケースがある。事前に権利処理を済ませる

音響は「聞こえないくらいがちょうどいい」と言われることがあります。観客が音響を意識せず、自然に作品の世界に入れることが理想です。