舞台照明の基礎知識|小劇場でもできる照明プラン

2026-02-08

ガイド照明舞台技術演劇知識実用

舞台照明は、演劇の雰囲気を作り、観客の視線を誘導する重要な要素です。小劇場レベルでも使える基礎知識を解説します。

照明の役割

舞台照明には主に以下の4つの役割があります。

  1. 視認性の確保:役者の顔や動きが見えるようにする
  2. 時間・場所の表現:朝・夜、室内・屋外を光で表現する
  3. 雰囲気の創出:色や明暗で感情的な空間を作る
  4. 注目の誘導:スポットライトで観客の視線を集める

基本的な照明機材

パーライト(PARライト)

最もポピュラーな照明器具です。柔らかく広い光を出します。

  • 地明かり(舞台全体を照らす基本の光)に使われる
  • 比較的安価で扱いやすい
  • カラーフィルター(ジェル)を装着して色を変えられる

フレネルスポットライト

レンズを使って柔らかいスポット光を出す器具です。

  • 光の範囲を調整できる(スポット/フラッド)
  • エッジ(光の境目)が柔らかい
  • 人物の顔を照らすのに適している

エリプソイダル(プロファイルスポット)

シャープな光を出す器具で、輪郭がはっきりした光を作れます。

  • ゴボ(模様)を入れて影の形を作れる
  • シャッターで光の形を四角く切れる
  • ピンスポットとして使用可能

LEDライト

近年の小劇場では LED 器具の使用が増えています。

  • 1台で多色の表現が可能(RGB混色)
  • 消費電力が少なく、発熱が少ない
  • カラーフィルター不要でコスト削減

地明かり(ベースライト)の作り方

「地明かり」は舞台全体を均一に照らす基本の照明です。

基本の考え方

  • 舞台を3〜4エリアに分割する(上手・センター・下手など)
  • 各エリアに前方45度の角度から2灯以上当てる
  • 左右からクロスさせることで影を減らす

色温度の目安

  • 昼の室内:薄いアンバー(#02 ジェル等)
  • 夜の室内:薄いブルー(#61等)+ 暖色のスポット
  • 屋外(昼):ニュートラル(フィルターなし)+ 薄いブルー
  • 屋外(夜):濃いブルー(#79等)

色の基本

照明の色は、カラーフィルター(ジェルシート)で作ります。

暖色系(赤・オレンジ・黄色)

  • 暖かさ、情熱、怒り、夕焼け
  • 使いすぎると暑苦しくなる

寒色系(青・紫)

  • 冷たさ、悲しみ、夜、静寂
  • 顔が見えにくくなるので注意

補色の組み合わせ

  • 舞台の左右から異なる色を当てると、立体感が出る
  • 例:上手(かみて)からアンバー、下手(しもて)からラベンダー

照明プランの作り方

1. 台本を読んで場面転換をリストアップ

  • シーンごとに時間帯と場所を確認
  • 感情の変化が大きい場面をマークする

2. シーンごとの「明かり」を決める

各シーンでどんな光が必要かを言葉で書き出します。

例:

  • 第1場:朝のリビング。明るく暖かい光。窓から日差し
  • 第2場:夜の公園。暗い青に街灯のスポット1本
  • 第3場:回想シーン。ピンク〜アンバーの柔らかい光

3. 仕込み図を描く

舞台の平面図に、照明器具の位置・向き・色を記入します。小劇場では劇場のバトン(照明を吊るパイプ)の位置が決まっているので、劇場の技術資料を事前に入手しましょう。

4. きっかけ表(キューシート)を作る

照明が変化するタイミング(きっかけ=キュー)をリストにします。

Q1  開演 → 暗転から地明かり(5秒フェードイン)
Q2  佐藤「行くよ」のセリフで → スポット追加(2秒)
Q3  暗転(場面転換)→ 3秒で暗転
Q4  第2場 → 地明かり(青)5秒フェードイン

小劇場での実践的なアドバイス

  • 劇場の下見は必須:使える機材、回路数、バトンの位置を確認
  • 仕込み時間は限られる:小劇場は仕込み〜バラシまで1日のことも多い。事前準備を入念に
  • 安全第一:高所作業には注意。電気系統は劇場スタッフの指示に従う
  • 暗転を多用しない:暗転のたびに観客の集中力が途切れる。明かりの変化でシーン転換する技術を身につけよう

照明は「見えない芸術」と言われますが、良い照明は作品の質を大きく高めます。まずは劇場の照明スタッフに相談しながら、基本を身につけていきましょう。