一人芝居の作り方と演じ方のコツ

2026-02-08

演劇知識一人芝居ソロ演劇ジャンル演技

一人芝居(ひとりしばい)は、舞台上に一人の俳優だけで演じる演劇形式です。最も少ない人数で成立する演劇であり、俳優の力量がストレートに問われるジャンルです。

一人芝居とは

一人芝居は英語では「One-Person Show」「Solo Performance」と呼ばれます。たった一人の俳優が、ときに複数の人物を演じ分け、物語を届けます。

一人芝居の類型

  • モノローグ型:一人の人物が語り続ける形式。独白劇
  • 多人物演じ分け型:一人で複数のキャラクターを演じ分ける
  • 語り型:物語の語り手として、登場人物を演じつつ物語を紡ぐ
  • パフォーマンス型:身体表現、パントマイム、ダンスなどを含む

一人芝居の脚本を書く

1. なぜ「一人」なのかを考える

「たまたま一人」ではなく、一人で演じることに必然性がある脚本を目指しましょう。

  • 一人の人間の内面を深く掘り下げる
  • 回想や告白という形式
  • 孤独や隔離がテーマ
  • 一人の視点からしか見えない世界を描く

2. 構成のパターン

パターンA:独白型

最初から最後まで一人の人物が語ります。語りかける相手は観客、不在の人物、あるいは自分自身。

パターンB:時間軸型

一人の人物の人生の断片を、時間をジャンプしながら描きます。20歳の自分→40歳の自分→10歳の自分、のように。

パターンC:多人物型

一人で複数のキャラクターを演じ分けます。衣装の小物(帽子、メガネなど)や声・姿勢の変化でキャラクターを区別します。

3. 脚本で注意すること

  • 単調にならない工夫:感情、テンポ、声のトーンに変化をつける場面を意識的に書く
  • 身体を使う場面を入れる:ずっと立って話すだけでは観客が飽きる
  • 上演時間:初めてなら15〜30分が適切。60分以上は体力・集中力ともに高いレベルが必要

演じ方のコツ

1. 視線の使い方

一人芝居では「視線」がすべてを語ります。

  • 観客に語りかける:客席の具体的な場所を見ながら語る
  • 不在の相手に語る:見えない相手がいる位置(空間)を固定する
  • 内面に向かう:視線を落としたり、遠くを見つめたりして、内省的な場面を表現

2. 空間の使い方

舞台のどこに立つかが、場面の雰囲気を変えます。

  • 中央:力強い、正面からの語りかけ
  • :不安定、孤独、秘密めいた場面
  • 前方:観客との親密さ
  • 後方:距離感、回想、客観的な語り

3. テンポの変化

一人芝居の最大の敵は「単調さ」です。

  • 速いセリフ→突然の沈黙
  • 小さな声→大きな声
  • 動き回る→ぴたりと止まる
  • 笑い→涙

対照的な要素を意識的に組み合わせましょう。

4. 身体性

言葉だけに頼らず、体で表現する場面を作りましょう。

  • パントマイムで小道具や場面を表現
  • 身体の姿勢・歩き方でキャラクターの変化を示す
  • 沈黙の中での身体の動きが、言葉以上に雄弁なことがある

一人芝居の演出

照明

  • スポットライト一本で十分なインパクトを出せる
  • 暗転なしで照明の変化だけでシーンを切り替えられる
  • 明暗の対比が一人芝居を引き立てる

音響

  • BGMの使いすぎに注意。一人の声と沈黙の力を信じる
  • 効果音で場面を補完する(電話の音、雨の音など)

小道具

  • 小道具は最小限にする(椅子1脚、帽子1つなど)
  • 一つの小道具を別の場面で別の用途に使うと、想像力を刺激できる

一人芝居の魅力

一人芝居は演劇の最小単位です。だからこそ、演劇の本質——「人が人の前で、ここではないどこかを現出させる」という行為が、最も純粋な形で現れます。

制約は多いですが、それがかえって創造性を刺激します。まずは短い一人芝居に挑戦して、「一人でどこまでできるか」を試してみてください。