平田オリザ|「静かな演劇」の創始者
2026-02-08
劇作家紹介平田オリザ青年団現代口語演劇岸田國士戯曲賞
平田オリザ(ひらた・おりざ)は、「現代口語演劇」を提唱し、日本演劇の流れを変えた劇作家・演出家です。演劇教育や文化政策にも深く関わり、演劇の社会的役割を追求し続けています。
プロフィール
- 生年月日:1962年11月8日
- 出身地:東京都
- 学歴:国際基督教大学(ICU)卒業
- 主な受賞歴:岸田國士戯曲賞(1995年『東京ノート』)、読売演劇大賞
- 現在の活動:劇団「青年団」主宰、芸術文化観光専門職大学学長(兵庫県豊岡市)
経歴
青年団の設立
1982年に劇団「青年団」を設立。翌年からこまばアゴラ劇場(東京都目黒区)を拠点に活動を開始しました。
「現代口語演劇」の確立
1990年代、平田は「現代口語演劇」という理論と実践を提唱し、日本演劇に大きな転換をもたらしました。
それまでの演劇は、日常会話とはかけ離れた「演劇的な」発声やセリフ回しが主流でした。平田は、実際の日常会話のリズム——途切れ、重なり、沈黙、取り留めのなさ——をそのまま舞台に乗せることで、リアルな「生活の手触り」を表現しようとしました。
演劇教育と文化政策
平田は劇作家・演出家としてだけでなく、演劇教育と文化政策の分野でも大きな功績を残しています。
- 小中学校の国語教科書に「演劇」の単元を導入する活動
- 『演劇入門』(講談社現代新書、1998年)はロングセラーとなり、演劇に関わる人の必読書に
- 大阪大学教授として「ロボット演劇」の研究
- 2021年、兵庫県豊岡市に芸術文化観光専門職大学を開学し、初代学長に就任
代表作品
- 『東京ノート』(1994年):美術館のロビーを舞台に、複数の会話が同時進行する群像劇。岸田國士戯曲賞受賞。平田の代表作として世界各国で上演されている
- 『ソウル市民』三部作(1989年〜):日本統治下のソウルを舞台にした歴史三部作
- 『カガクするココロ』(2001年):大学の理系研究室を舞台にした日常の一コマ
- 『三人姉妹』(1998年):チェーホフの翻案ではなく、日本の三人姉妹を描くオリジナル作品
- 『銀河鉄道の夜』(ロボット版、2011年):人間の俳優とロボットが共演するロボット演劇
「現代口語演劇」の技法
同時多発会話
平田の舞台では、複数の会話が同時に進行します。現実の空間(リビング、待合室、職場など)では、一つの会話だけが行われることは稀です。平田はこの現実を舞台上に再現しました。
沈黙と間
平田の舞台には長い沈黙があります。気まずい沈黙、考えている沈黙、何も言えない沈黙——沈黙にも意味があることを、平田は舞台上で証明しました。
「会話」と「対話」
平田は著書『演劇入門』で、「会話」と「対話」を区別しています。
- 会話:すでに文脈を共有している者同士のやりとり(例:家族の会話)
- 対話:異なる文脈を持つ者同士のやりとり(例:初対面の人との対話)
演劇的に豊かなのは「対話」の場面であり、異なる価値観がぶつかり合うところにドラマが生まれると平田は主張します。
平田オリザを読む・観る
- 戯曲:『平田オリザ戯曲集』(晩成書房)が充実
- 評論:『演劇入門』(講談社現代新書)は演劇に関心のあるすべての人におすすめ
- エッセイ:『わかりあえないことから』(講談社現代新書)はコミュニケーション論としても読める
平田の演劇は、一見「何も起きていない」ように見えるかもしれません。しかし、よく観ていると、人と人の間に流れる微妙な感情の変化や、言葉にならない想いが見えてきます。それこそが「静かな演劇」の真髄です。
