演出の基本|稽古の進め方とダメ出しのコツ

2026-02-08

ガイド演出稽古演劇知識実用

「演出」は、戯曲を舞台作品として立ち上げる仕事です。初めて演出を担当する方に向けて、基本的な流れとコツを解説します。

演出家の役割とは

演出家は、戯曲のテキストを読み解き、それを舞台上の「時間」と「空間」に変換する人です。具体的には以下の仕事を担います。

  • 作品の解釈・コンセプト決定
  • キャスティング(配役)
  • 稽古の進行・指導
  • 舞台美術・照明・音響スタッフとの打ち合わせ
  • 作品全体の統一感を保つ

稽古の基本的な流れ

一般的なアマチュア公演(本番1〜2ヶ月前から稽古開始)の場合、以下のような流れで進みます。

第1週〜第2週:読み合わせ(本読み)

テーブルを囲んで脚本を読む段階です。

  • 初回:通して読む。役者に全体の流れを把握してもらう
  • 2回目以降:シーンごとに区切り、セリフの意味や人物の関係性を話し合う

この段階で演出家がやるべきこと:

  • 作品の背景・テーマを共有する
  • 登場人物の設定(年齢、職業、性格、人間関係)を確認する
  • 分からない言葉や時代背景があれば調べて共有する

第3週〜第5週:立ち稽古(ブロッキング)

役者が立って動きをつけていく段階です。

  • ブロッキング:誰がどこに立ち、どう動くかを決める
  • 最初は大まかな動線を決め、繰り返しながら細部を詰める
  • セリフと動きを同時に覚えていく

ポイント:

  • 早い段階でセリフを入れる(台本を手放す)よう促す
  • 動きは「なぜそこに移動するのか」理由を明確にする
  • 舞台の上手(かみて)・下手(しもて)の意識を持たせる

第6週〜第7週:通し稽古

全体を通して行う稽古です。

  • 最初はセリフが飛んでも止めずに通す
  • 通した後にメモをまとめてダメ出しする
  • 照明・音響のきっかけ(キュー)を入れ始める

最終週:ゲネプロ(総稽古)

本番と同じ条件で行うリハーサルです。衣装、メイク、照明、音響をすべて入れて通します。

ダメ出しのコツ

「ダメ出し」は演劇界独特の用語で、演出家が役者に改善点を伝えることです。効果的なダメ出しのためのポイントを紹介します。

1. 具体的に伝える

  • 悪い例:「もっと感情を込めて」
  • 良い例:「このセリフの前に、2秒間黙ってから相手を見て言ってみて」

抽象的な指示は役者を混乱させます。具体的な動作・間(ま)・テンポで指示しましょう。

2. 否定ではなく提案する

  • 悪い例:「そこは違う」
  • 良い例:「別のアプローチを試してみよう。〇〇してみたらどうかな」

役者が萎縮すると、稽古全体の雰囲気が悪くなります。

3. 良いところを認める

改善点だけでなく、良かった点も必ず伝えましょう。役者のモチベーション維持は演出家の大切な仕事です。

4. メモを取る

通し稽古中にメモを取り、終わった後にまとめて伝えます。途中で止めてその場で指摘するのは、通し稽古では避けましょう(部分稽古では止めてもOK)。

演出で意識すべきこと

テンポとリズム

舞台には音楽のようなテンポとリズムがあります。

  • セリフの間(ま)の長さ
  • シーンとシーンの切り替えのスピード
  • 緊張と弛緩のバランス

単調にならないよう、緩急をつけることを意識しましょう。

視線の誘導

観客の目がどこを見ているかを常に意識します。

  • 大切なセリフを言うときは、他の役者の動きを止める
  • 照明で注目すべき場所を作る
  • 舞台上の「絵」として美しいかを客席から確認する

空間の使い方

  • 舞台の奥行きを使う(前だけでなく、奥にも人を配置する)
  • 高低差があると画面が豊かになる(階段、台など)
  • 役者同士の距離が関係性を表す(近い=親密、遠い=対立)

初心者演出家へのアドバイス

  1. 脚本を何度も読む:最低10回は読み込む
  2. 客席から見る:稽古中、演出家は必ず客席側に座る
  3. 全体を見る:一人の役者に集中しすぎず、舞台全体を見る
  4. 判断力を持つ:迷ったら決める。決断の遅い演出家はカンパニーの不安材料になる
  5. スタッフと密にコミュニケーションを取る:照明・音響・美術は「共同制作者」

演出は孤独な作業でもありますが、カンパニー全員で作品を作り上げる喜びは格別です。まずは短編作品から挑戦してみてください。