児童劇・子ども向け演劇の作り方
2026-02-08
演劇知識児童劇子ども演劇ジャンル演劇教育
子ども向け演劇(児童劇)は、演劇の中でも特別なジャンルです。対象年齢に合わせた作り方と、安全面の配慮について解説します。
児童劇とは
児童劇は、子ども(主に3歳〜12歳)を対象とした演劇です。日本では児童劇団やプロの劇団が学校巡回公演、劇場公演、ホール公演などを行っています。
日本児童・青少年演劇劇団協同組合に加盟する劇団だけでも数十団体あり、年間数千回の公演が行われています。
年齢別の特徴と注意点
幼児(3〜5歳)
- 集中力:15〜30分が限度
- 内容:シンプルな物語、繰り返しのあるストーリー、参加型が効果的
- 注意:暗転(真っ暗になる演出)を怖がる子がいる。完全な暗転は避ける
- 音量:大きすぎる音や突然の音は泣く子がいるので配慮
小学校低学年(6〜8歳)
- 集中力:30〜60分程度
- 内容:冒険、友情、ユーモアのある物語。善悪がはっきりした構成
- 参加型:観客に声をかける演出(「右だよ!」「危ない!」など)が盛り上がる
小学校高学年(9〜12歳)
- 集中力:60〜90分
- 内容:やや複雑なテーマ(いじめ、環境問題、多様性など)も扱える
- 注意:子ども扱いしすぎると反発される。大人と同じ目線で語ることが大切
脚本選び・脚本作り
既成脚本を使う場合
児童劇の既成脚本は、以下で探せます。
- 児童劇団の出版物
- 日本演劇教育連盟の刊行物
- 戯曲図書館でのキーワード検索
上演許可の取得は大人向けと同じく必要です。
オリジナル脚本を書く場合
児童劇の脚本で意識すべきポイント:
- 主人公は子どもの目線で:子どもが共感できる主人公を設定する
- テーマを押し付けない:「教訓」よりも「物語の面白さ」が先
- セリフはわかりやすく:難しい言葉を避ける。ただし「子ども語」にする必要はない
- 展開にメリハリを:静かなシーンと動きのあるシーンを交互に
- 参加のきっかけを作る:観客に声を出させたり、手を振らせたりする場面を入れる
演出のポイント
視覚的に伝える
子どもは視覚情報で理解します。
- 衣装やメイクでキャラクターを一目で識別できるようにする
- 大きなジェスチャー、はっきりした動きで場面を伝える
- 小道具は大きめに作ると、後方の席からも見える
テンポを保つ
- 長いセリフの掛け合いが続くと飽きる
- 歌、ダンス、アクションを適度に挟む
- 場面転換は素早く
観客との一体感
- 開演前のあいさつで緊張をほぐす
- 「みんなで歌おう」「一緒に数えよう」など参加型の要素
- カーテンコールで子どもたちにも拍手を返す
安全管理
子ども向け公演では、安全管理が最優先です。
会場の安全
- 非常口の確認:学校や劇場の避難経路を把握
- 段差・障害物:子どもがつまずく危険のある場所を事前にチェック
- 温度管理:体育館での公演は、夏は熱中症、冬は寒さ対策
演出上の安全
- 暗転:幼児公演では完全暗転を避ける(薄明かりを残す)
- 大きな音:突然の大音量は避ける。特に雷や爆発の効果音に注意
- 恐怖表現:怖すぎる表現はトラウマになる可能性がある
- 舞台からの落下防止:子どもが舞台に上がる演出では必ず安全策を講じる
- アレルギー対応:小道具に食品を使う場合はアレルギーに配慮する
スタッフの注意
- 子どもと二人きりになる状況を作らない
- 写真撮影は保護者・主催者の許可を得る
- 怪我や体調不良に備えて救急キットを用意
学校巡回公演について
小中学校で体育館を使って公演する「巡回公演」は、児童劇の主要な活動形態です。
- 文化庁の「文化芸術による子供育成推進事業(巡回公演事業)」の制度がある
- 学校側との事前打ち合わせ(体育館の広さ、電源、暗幕の有無など)が重要
- 搬入・仕込み・本番・バラシを1日で行うことが多い
児童劇に取り組むには
児童劇は「子ども向け」であっても、手を抜いてよいわけではありません。むしろ、子どもの集中力や感受性に応えるための高い技術と配慮が求められます。
子どもたちが初めて出会う「生の演劇」が、一生の思い出になるかもしれません。その責任と喜びを胸に、児童劇に取り組んでみてください。
