演劇脚本の著作権と上演許可の取り方【完全解説】

2026-02-12

著作権上演許可演劇ガイド高校演劇

演劇脚本の著作権と上演許可の取り方【完全解説】

「この脚本を上演したいけれど、許可は必要?」「どこに連絡すればいいの?」

演劇を上演する際、避けて通れないのが著作権上演許可の問題です。この記事では、著作権法の基本から、具体的な上演許可の取り方まで、実務に必要な知識をわかりやすく解説します。


1. 著作権の基本を理解しよう

脚本は「著作物」

演劇の脚本(戯曲)は、著作権法で保護される著作物です。脚本を書いた人(劇作家)には、以下の権利が認められています。

著作財産権(経済的権利)

  • 上演権(第22条): 脚本を公に上演する権利
  • 複製権(第21条): 脚本をコピーする権利
  • 公衆送信権(第23条): インターネットで配信する権利

著作者人格権

  • 同一性保持権(第20条): 脚本を無断で改変されない権利
  • 氏名表示権(第19条): 著作者名を表示してもらう権利

著作権の保護期間

日本の著作権法では、著作者の没後70年まで著作権が保護されます(2018年の法改正で50年から延長)。

つまり:

  • 著作者が1955年以前に亡くなった作品 → パブリックドメイン(自由に利用可能)
  • それ以降に亡くなった作品 → 著作権あり(許可が必要)

: 岸田國士(1954年没)の作品はパブリックドメインです。青空文庫で無料で読めます。


2. 上演許可が「いらない」ケース

著作権法第38条第1項では、以下の3つの条件をすべて満たす場合、著作権者の許可なく上演できると定めています。

第38条の3つの条件

条件具体例
① 営利を目的としない文化祭、学芸会、ボランティア公演
② 観客から料金を受けない入場無料であること
③ 出演者に報酬を支払わない交通費・弁当代などの実費は可

この3条件を満たせば、法律上は許可なく上演できます。

教育目的の例外(第35条)

学校の授業の過程で使用する場合は、著作権法第35条により、著作物の複製や公衆送信が認められています。ただし、これは「授業」に限定されており、文化祭や演劇大会は「授業」に該当しない場合が多いので注意が必要です。


3. 上演許可が「必要」なケース

法律上、許可が必要なケース

  • 入場料を取る公演
  • 出演者に報酬を支払う公演
  • 営利目的のイベントでの上演
  • 映像配信・録画する場合(公衆送信権・複製権)

高校演劇の特別ルール(重要!)

全国高等学校演劇協議会は、法律の例外に該当する場合であっても、以下の独自ルールを設けています:

既成作品を上演する場合は、必ず著作権者から「上演許可」を得なければならない

つまり、高校演劇の大会(地区大会・都道府県大会・全国大会)では、たとえ入場無料・非営利であっても上演許可が必須です。

許可を取らずに大会に参加しようとして上演が認められなかったケースや、上演後に著作権者から指摘があり上演記録から抹消されたケースもあります。

参考: 全国高等学校演劇協議会 著作権ガイドライン


4. 上演許可の取り方【ステップバイステップ】

Step 1: 著作権者を特定する

まず、脚本の著作権を誰が管理しているかを確認します。

管理先確認方法
著作者本人脚本の奥付、著者のウェブサイト・SNS
出版社脚本が書籍化されている場合
日本脚本家連盟会員検索で確認
日本劇作家協会公式サイトで確認
劇団・プロダクション劇団所属の作家の場合

Step 2: 連絡先がわからない場合

  • 出版社に問い合わせる: 書籍化されている場合、出版社が仲介してくれることが多い
  • 日本劇作家協会に問い合わせる: 会員の場合、協会経由で連絡できる
  • 日本脚本家連盟に問い合わせる: TEL 03-6256-9961
  • 戯曲デジタルアーカイブ: 掲載作品であれば連絡先の案内がある

Step 3: 上演許可を申請する

連絡先が判明したら、以下の情報を添えて申請します。

申請に必要な情報:

  • 上演する作品名・著作者名
  • 上演団体名(学校名・劇団名)
  • 上演日時・会場
  • 入場料の有無と金額
  • 観客の想定人数
  • 脚本の改変・カットの有無
  • 大会出場の場合はその旨

申請方法:

  • 手紙またはメールで連絡
  • 返信用封筒(切手貼付)を同封するのがマナー
  • 日本脚本家連盟の場合は専用フォームから申請

Step 4: 上演料を支払う

上演許可が下りたら、指定された上演料を支払います。

上演料の目安:

  • 高校演劇大会: 無料~数千円程度(作家による)
  • アマチュア公演(入場無料): 無料~1万円程度
  • アマチュア公演(入場料あり): 1万円~数万円程度
  • プロ公演: 総興行収入の一定割合(日本劇作家協会が統一モデル契約書を公開)

注意: 上演料は作家や管理団体によって大きく異なります。必ず事前に確認してください。

Step 5: 改変がある場合は脚本を送付

カットや台詞の変更などの改変がある場合は、改変後の脚本を著作者に送付し、承認を得る必要があります。これは著作者人格権(同一性保持権)に関わる重要な手続きです。


5. 日本脚本家連盟での手続き

日本脚本家連盟は、所属する脚本家の上演権を代理管理しています。

手続きの流れ

  1. 連盟の会員検索で脚本家が所属しているか確認
  2. 使用申請フォームに必要事項を記入して送信
    • 使用作品タイトル
    • 脚本家名
    • 使用態様(上演、再放送、配信等)
    • 公演の詳細(日時、会場、料金等)
    • 申請者情報(団体名、担当者名、連絡先)
  3. 連盟から使用許諾書・請求書が発行される
  4. 指定口座に使用料を振込

連盟は文化庁に使用料規程を届け出ています。


6. よくある質問(Q&A)

Q: 文化祭で無料上演するなら許可はいらない?

法律上は、入場無料・非営利・出演者無報酬の3条件を満たせば許可不要です(第38条)。ただし、高校演劇大会の場合は独自ルールで許可が必要です。また、法的に不要でも、著作者への敬意として連絡を入れるのが演劇界のマナーです。

Q: 脚本をカットして短くしたい

著作者の「同一性保持権」(第20条)があるため、必ず著作者の承諾が必要です。高校演劇では60分以内という制限があるため、カットは頻繁に行われますが、必ず事前に許可を取りましょう。

Q: YouTube等で公演映像を配信したい

上演権とは別に公衆送信権(第23条)が関わります。上演許可とは別途、映像配信の許可を取る必要があります。

Q: 許可をもらえなかったらどうする?

著作者には許可しない権利もあります。残念ですが、別の作品を選びましょう。複数の候補を持っておくことをおすすめします。

Q: 著作権が切れた作品なら何をしてもいい?

パブリックドメインの作品は自由に上演できますが、翻訳作品の場合は翻訳者の著作権が生きている可能性があります。また、著作者人格権は永続するという解釈もあるため、原作の意図を大きく損なう改変は避けるべきです。

Q: 海外の作品を上演したい

翻訳権・翻案権が関わります。翻訳者の許可が必要なほか、原作者の著作権管理団体への確認も必要です。出版社を通じて手続きするのが一般的です。


7. スケジュールの目安

上演許可の手続きには時間がかかります。余裕を持ったスケジュールで進めましょう。

時期やること
上演3~6ヶ月前作品候補を選定、著作権者を調査
上演2~3ヶ月前上演許可を申請
上演1~2ヶ月前許可取得、上演料支払い
上演後改変脚本の送付(改変がある場合)、お礼の連絡

高校演劇の大会の場合: 地区大会の数ヶ月前には申請を済ませておくのが理想的です。直前になって急ぎの対応を求めることは、著作者への失礼にあたります。


まとめ

  • 脚本には上演権があり、原則として著作権者の許可が必要
  • 非営利・無料・無報酬の3条件を満たせば法律上は許可不要(第38条)
  • 高校演劇大会では法律の例外に関わらず許可が必須(独自ルール)
  • 許可申請は著作者本人・出版社・日本脚本家連盟・日本劇作家協会のいずれかへ
  • 時間に余裕を持って手続きを進めることが大切
  • 著作者への敬意と感謝を忘れずに

脚本は劇作家の大切な創作物です。正しい手続きを踏むことは、演劇文化を支えることにつながります。


参考リンク