上田久美子 プロフィール|『バイオーム』につながる経歴・作風・受賞歴と近年の活動

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上田久美子 プロフィール|『バイオーム』につながる経歴・作風・受賞歴と近年の活動

上田久美子さんは、壮大な構想力と批評性を備えた作品で注目を集めてきた劇作・演出家です。宝塚歌劇で数々の話題作を手がけたのち、独立後は商業演劇の枠を越えた創作にも取り組み、近年は日本とフランスをまたぐ活動へと歩みを広げています。

この記事では、上田久美子さんの経歴、作風、受賞歴、代表作、そして近年の公式活動情報を整理します。あわせて、戯曲図書館に掲載されている作品ページも紹介します。

基本プロフィール

項目内容
名前上田久美子(うえだ・くみこ)
出身奈良県
学歴京都大学文学部フランス語学フランス文学科卒業
主な肩書劇作家・脚本家・演出家
主な経歴元宝塚歌劇団演出部、Projectumï主宰
活動の特徴娯楽性と批評性を両立しながら、人間中心の視点をずらす作品づくり

上田さんは、華やかな舞台性と鋭い問題意識を同時に成立させる書き手として知られています。大きな物語のうねりを作りながらも、登場人物の痛みや欲望を曖昧にせず描く点が特徴です。

経歴

上田さんは一般企業勤務を経て、2006年に宝塚歌劇団演出部に入りました。2013年には『月雲の皇子』で脚本・演出家として本格的に存在感を示し、その後も宝塚歌劇で意欲的な作品を発表し続けました。

とくに、歴史や音楽、美術、神話的な構造を取り込みながら、登場人物の内面を濃密に立ち上げる作風によって、宝塚作品のなかでも独自の位置を築いたといえます。2015年の『星逢一夜』では第23回読売演劇大賞優秀演出家賞を受賞し、演出面でも高い評価を受けました。

2022年に宝塚歌劇団を退職した後は、より自律的な創作へと舵を切ります。同年のスペクタクルリーディング『バイオーム』では、植物の時間と人間の感情の時間を重ね合わせる構想に挑み、岸田國士戯曲賞の最終候補となりました。2023年にはオペラ『道化師』『田舎騎士道』の演出を担当し、2023年から2024年にかけては文化庁の研修制度でフランスの公共劇場に滞在しています。

現在は、自身の企画・制作団体Projectumïを運営しながら、日本国内と海外の両方を視野に入れた活動を続けています。

作風

上田久美子さんの作品を語るうえで重要なのは、エンタテインメントの強度と、世界の見え方を問い直す批評性が両立していることです。

たとえば宝塚時代の作品では、恋愛や宿命、歴史のうねりを大きなスケールで描きながら、その奥にある孤独、階級、暴力、共同体の残酷さが丁寧に織り込まれています。一方で独立後の作品では、人間ドラマだけに視線を固定せず、植物や環境、観客の身体感覚まで含めたかたちで、舞台芸術の枠組みそのものを更新しようとする姿勢がより前面に出ています。

上田作品の魅力は、次のような点に集約できます。

  • 物語の推進力が強く、観客を引き込む構成力があること
  • 美しい言葉や音楽性を持ちながら、感傷だけに流れないこと
  • 人間の感情を描きつつ、人間中心主義を相対化しようとすること
  • 古典的な劇場体験と、新しい知覚体験の両方を志向していること

そのため、上田さんは「ドラマをきちんと成立させる書き手」であると同時に、「舞台で何を知覚させるか」を更新しようとする作家でもあります。

受賞歴・評価

上田さんの主要な評価歴として、まず挙げたいのが『星逢一夜』による第23回読売演劇大賞優秀演出家賞です。これは、華やかさだけでなく、演出構成そのものの精度が高く評価された結果といえます。

さらに、『バイオーム』は2022年の岸田國士戯曲賞最終候補となりました。宝塚退団後まもない時期の作品で、上田さんがより実験的な方向へ踏み出してもなお、戯曲そのものの強度で注目されたことを示しています。

また、『翼ある人びと』と『桜嵐記』は、いずれも鶴屋南北戯曲賞の候補作として知られています。大衆性の高い上演形式のなかで、戯曲の文学性と構造的な緻密さを両立させてきたことが、こうした評価にもつながっています。

戯曲図書館に掲載されている主な作品

戯曲図書館では、上田久美子さんの関連作品ページを確認できます。上演候補を比較したい方や、作風の幅を見渡したい方に便利です。

代表作の見どころ

**『バイオーム』**は、上田さんの近年の問題意識がはっきり表れた作品です。人間のメロドラマと植物の意識世界を併置する発想には、従来の人間中心のドラマから一歩外へ出ようとする意志が見えます。劇場で何を感じさせるのかという問いが、作品全体を貫いています。

**『翼ある人びと』**は、音楽家ブラームスとクララ・シューマンを題材にした作品として知られています。芸術と情念、敬愛と抑制のせめぎ合いを描くうえで、上田さんらしい品格と熱量の両立が感じられます。

**『桜嵐記』**は、歴史的題材をもとにしながら、個人の悲願と時代の大きな流れを交差させる構造が印象的な作品です。運命に押し流される人物たちの感情線を、濃やかな言葉と高い劇性で立ち上げています。

近年の活動(公式情報ベース)

近年の公式情報としては、まず上田さん自身の公式サイトで、Projectumïの活動が継続的に発信されています。2025年には自主公演『寂しさにまつわる宴会』を立ち上げ、宴会場という空間を使った上演形式にも挑みました。これは、前衛と大衆娯楽のあいだにある場所を探る試みとして位置づけられています。

また、城崎国際アートセンターでは、2024年の滞在制作として「呼吸にまつわるトレーニングプール」関連プロジェクトが紹介されています。ここでは、上田さんが人間以外の生命や異なる時間感覚をどう舞台化するかという関心を、さらに発展させていることがうかがえます。

さらに公式サイトでは、2026年にSPACで『ハムレット』の演出を控えていること、新作のワーク・イン・プログレスが進行中であることも案内されています。加えて、上田さんは2026年度セゾン・フェローIIにも選出されており、現在進行形で創作の射程を広げている段階にあるといえます。

上演・読解のポイント

上田久美子作品を読む、あるいは上演候補として検討する際には、次の視点を意識すると特徴が見えやすくなります。

  1. 物語の大きな推進力と細部の感情線の両方を見ること
    スケールの大きい設定に目を奪われがちですが、実際には人物同士の微細な感情のズレが作品の核を作っています。

  2. 美しさの裏にある批評性を拾うこと
    台詞や場面が美しく見えるほど、その裏にある制度や暴力、孤独が際立つ構造になっていることがあります。

  3. 人間以外の視点をどう導入しているかに注目すること
    とくに近年作では、環境や身体、観客の知覚まで含めてドラマを捉え直そうとする方向性が明確です。

まとめ

上田久美子さんは、宝塚歌劇で培った高い劇場性を土台にしながら、その先で舞台芸術の新しい可能性を押し広げている劇作・演出家です。大衆性のあるドラマを書ける人でありながら、その内部に批評性と実験性を忍ばせる点に、上田さんならではの強さがあります。

戯曲図書館で『バイオーム』『翼ある人びと』『桜嵐記』を見比べると、上田さんの関心が歴史劇、音楽劇、そして人間中心主義を揺さぶる現代的な試みへと広がっていることが見えてきます。今後の新作動向も継続して注目したい書き手のお一人です。


参考資料

この記事で紹介した戯曲

Written by

戯曲図書館 編集部

演劇経験者が運営する戯曲検索サービス「戯曲図書館」の編集チームです。 脚本選びのノウハウ、演劇業界の最新情報、公演レポートなどを発信しています。

公開日: 2026-05-23

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