ソウル市民を読んだ感想
ソウル市民は、「ソウル市民」、「ソウル市民1919」、「ソウル市民昭和望郷編」、「ソウル市民1939・恋愛二重奏」、「サンパウロ市民」などとシリーズでわかれており、内容が異なります。 平田オリザさんは、この戯曲を書き上げた瞬間に「自分はこれで日本演劇史に名を残したな」と思ったそうです。 しかし、初演はそんなに集客がなく、一部から評価されるだけでした。 それでも、現代口語演劇のパイオニアとして歴史を刻む一作品であることに変わりはないでしょう。 平田オリザ『ソウル市民』では支配層の日常が描かれています。 韓国を日本が支配するちょっと前。朝鮮半島に住む日本人家族の話です。 登場人物はそれぞれ好き勝手に会話をしていて朝鮮支配の様子とはまるで関係のない様子でいます。そんな無意識的に出てくる支配者の様子を描いています。タコの話をずっとする男や、いつまでも来ない恋人を待つ女の子。席をたったきりもどってこない怪しいマジシャンなどなど、どこか変なんだけれども、それを観ている私たちと通じる何かがあって、本当に間接的だけれども、自分も無意識に何らかの支配者になっているのかもと、思わせる舞台です。 平田オリザさんの舞台は、いつも舞台上にでてこないものを想像させたり、外で起こっていることを考えさせることで、物語が成り立っていくのですが、この『ソウル市民』も例外でなく、外と内の関係が非常に大事になっています。外では朝鮮人がいて、内は日本人が固まっている。その構図こそが支配者、被支配者の関係を端的に表しているのではないかと思うのです。『ソウル市民1919』では、この関係が極めて顕著に写って考えさせられました。 リアルな会話で構造的に訴えかける戯曲を探す方はぜひ、一度お読みください。