真也は物や人に触れることで、 そこに残った過去の記憶を視られる超能力を持つ。 それを打ち明けられたカオルは、 二十年ぶりにアメリカから帰ってくる父、 晴雄にその力を使って欲しいと真也に頼んだ。 映画の仕事のために家族を捨てて渡米した晴雄の事を カオルは信じられず、何か別の目的でもあるのではと疑っている。 紆余曲折を経て真也が視た晴雄の記憶では、 白衣で仕事をしている様子の彼が視えたが……。
真也は出版社に勤める立派な社会人ですが、 どこか抜けたところがある、少しばかり視野の狭い青年です。 その一方で、一度決めたことには真摯に立ち向かう、 突き抜けた行動力を持っています。 恐らく、普段の生活からしてそうなのでしょう。 真也が目的を持って動き出す時には、 根回し等せずとも、家族や職場の仲間が自然にサポートしてくれます。 色んな場面で、彼の人徳が垣間見えました。 主人公でありながらも、狂言回しにも語り部などにも見える キャラ付けには舌を巻きます。終盤には愛着も十分に湧き、 真也と同じ気持ちでカオル一家の物語を見守ることができました。 この作品を安心して楽しむことができたのは、 彼の一途な想いのおかげだったと思います。 真也の行動が物語を動かし、 登場人物の感情を少しずつ変化させて行きます。 晴雄の目的は何なのか、カオルは父に対して心を開くのか……。 穏やかだけれども単純ではない、 大人の人間関係が紡ぐ、切なくも優しい物語です。 閉幕直前、真也が自らの超能力についてのある特徴をつぶやきます。 それにより、作者が伝えたいのであろうテーマとメッセージが明るみに出ます。 その特徴が、作中のあらゆる設定や演出とどのように繋がっているのか、 是非読んで考えてみてください。
成井豊(なるい ゆたか)さんは、日本の劇作家、演出家で、劇団「キャラメルボックス」の創設者として知られています。1959年生まれ、東京都出身で、早稲田大学第一文学部演劇科を卒業されています。1985年に「キャラメルボックス」を旗揚げし、以来、多くの作品の脚本・演出を手掛けてこられました。
成井さんは、早稲田大学在学中に演劇活動を開始し、1985年に劇団「キャラメルボックス」を結成されました。劇団は、ファンタジーやSF要素を取り入れた作品で人気を博し、日本の演劇界に新風を吹き込んできました。成井さんは、劇団の全作品の脚本・演出を担当し、その独特の世界観と感動的な物語で多くの観客を魅了してきました。
成井さんの作品は、心温まるストーリーと個性的なキャラクターが特徴です。以下に主な作品を挙げます。
成井さんは、その創造性と演劇界への貢献が評価され、以下の賞を受賞されています。
成井さんは、劇団の活動以外にも、他劇団や商業演劇の脚本・演出を手掛けるなど、幅広く活躍されています。また、演劇に関する著書も執筆されており、その経験と知識を後進に伝えています。
(2025年3月現在)