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上演時間
60分
総人数
8人
男性
4人
女性
4人
真也は物や人に触れることで、 そこに残った過去の記憶を視られる超能力を持つ。 それを打ち明けられたカオルは、 二十年ぶりにアメリカから帰ってくる父、 晴雄にその力を使って欲しいと真也に頼んだ。 映画の仕事のために家族を捨てて渡米した晴雄の事を カオルは信じられず、何か別の目的でもあるのではと疑っている。 紆余曲折を経て真也が視た晴雄の記憶では、 白衣で仕事をしている様子の彼が視えたが……。
真也は出版社に勤める立派な社会人ですが、 どこか抜けたところがある、少しばかり視野の狭い青年です。 その一方で、一度決めたことには真摯に立ち向かう、 突き抜けた行動力を持っています。 恐らく、普段の生活からしてそうなのでしょう。 真也が目的を持って動き出す時には、 根回し等せずとも、家族や職場の仲間が自然にサポートしてくれます。 色んな場面で、彼の人徳が垣間見えました。 主人公でありながらも、狂言回しにも語り部などにも見える キャラ付けには舌を巻きます。終盤には愛着も十分に湧き、 真也と同じ気持ちでカオル一家の物語を見守ることができました。 この作品を安心して楽しむことができたのは、 彼の一途な想いのおかげだったと思います。 真也の行動が物語を動かし、 登場人物の感情を少しずつ変化させて行きます。 晴雄の目的は何なのか、カオルは父に対して心を開くのか……。 穏やかだけれども単純ではない、 大人の人間関係が紡ぐ、切なくも優しい物語です。 閉幕直前、真也が自らの超能力についてのある特徴をつぶやきます。 それにより、作者が伝えたいのであろうテーマとメッセージが明るみに出ます。 その特徴が、作中のあらゆる設定や演出とどのように繋がっているのか、 是非読んで考えてみてください。