日本は三つの大国に分かれていた。そしてそれぞれの国が領土を拡大するために、戦争をしていた。そんな中、誘拐されて地下室に閉じ込められていた少女ケガレは外へと脱出する。そして世界のことを何も知らないまま、カネコ組の仕事を手伝うことになる。戦争で戦う兵士の中には大豆でできた人造兵士も混ざっていた。その人造兵士を再利用するために死体をかき集める仕事を、カネコ組は行っていた。ケガレはそんな世界に振り回されながらも、次第に過去の記憶を取り戻していく。
非常に長い作品ですが、テンポがとても良いのであまり気になりませんでした。戦争という殺伐とした世界の中で必死に生きる人々や、生殖機能をつられた故に苦しむダイズ兵の姿がコミカルに描かれています。戦争の悲惨さという重たいテーマを扱っていますし、実際にそのような描写はたくさん出てきますが、コメディ寄りの作品なのでグロテスクな描写はありません。その点は安心して読むことができます。とにかくみんな癖が強く、真剣なのかふざけているのかわからない言動をするので、とても楽しんで読むことが出来ます。 主人公の少女ケガレは閉じ込められていたこともあって、最初は何も知らない様子でした。ですが、カネコ組とかかわることによってお金に執着を覚えるなど徐々に変わっていきます。そしてハリコマと結婚したのちには、ミソギとして生きていきます。その心の成長というのがこの作品の見どころであると思います。そして、すべてを手に入れたのにも関わらず、自らの過去にとらわれてしまう姿にはとても切なさを感じてしまいました。 これらの登場人物以外にも、たくさん個性的なキャラクターが出てくるので、戯曲で読むだけでなく、実際の舞台を見に行ってみたいと思いました。
松尾 スズキ(まつお スズキ)さんは、福岡県北九州市出身の劇作家、演出家、俳優、脚本家、映画監督、コラムニストです。1988年に劇団「大人計画」を旗揚げし、以降、多彩な分野で活躍されています。
松尾さんは、九州産業大学芸術学部デザイン学科を卒業後、1988年に劇団「大人計画」を設立し、作・演出・出演を手がけています。1997年には『ファンキー!~宇宙は見える所までしかない~』で第41回岸田國士戯曲賞を受賞。2004年には映画『恋の門』で長編映画監督デビューを果たし、ヴェネツィア国際映画祭に正式出品されました。さらに、2008年には映画『東京タワー オカンとボクと、時々、オトン』で第31回日本アカデミー賞最優秀脚本賞を受賞しています。近年では、2020年よりBunkamuraシアターコクーンの芸術監督、2023年より京都芸術大学舞台芸術研究センターの教授に就任しています。
松尾さんは、小説家やコラムニストとしても活躍しており、『クワイエットルームにようこそ』や『老人賭博』などの作品で芥川賞候補にノミネートされています。また、2020年よりBunkamuraシアターコクーンの芸術監督、2023年より京都芸術大学舞台芸術研究センターの教授として、後進の育成にも力を注いでいます。
(2025年3月現在)