日本文学盛衰史を読んだ感想
日本文学盛衰史というタイトルから、難しい内容の作品ではないかと思いました。ですがそんなことはなく、とても楽しく読めました。登場人物は主に明治に活躍した文豪たちです。この作品では当時の文学や政治の話などが出てきます。しかしその話の中で突然、現代の時事ネタが出てきます。例えば夏目漱石がLINEで猫のスタンプを使ったり、和田アキ子や藤原竜也など有名人の名前が出てきたり、twitterがでてきたりと、明治と現代を行ったり来たりします。最初はそれに驚きますが、慣れてくるとクスっと笑えるので、飽きることなく最後まで読めます。 また、文豪たちのキャラクターも魅力的です。実際のエピソードを踏まえてユーモラスに描かれているので、その知識があるとさらに楽しめると思います。文豪をテーマした作品は数多くありますが、宮沢賢治をラッパーにしたのはこの作品くらいでしょう。政治犯たちも読んでいて心配になる程のブラックユーモアにあふれています。私は特に田山花袋のキャラが好きです。 全体的にコメディな要素が強い作品ですが、小説についての議論だと真剣な言葉が交わされます。樋口一葉の「私は生活のために小説を書きたいと思っていますが、でも、そこで書かれた貧しい人は小説を読みません」や、夏目漱石の「私たちは国民国家を作るために、新しい日本語を育てた。しかし、これからは、言葉は日本国にあだなすものとなるでしょう」など、思わずハッとさせられるような言葉が出てきます。このような真剣さと面白さのギャップが、この作品の一番の魅力です。