「ボク」と「ケンジ」は、 小学校6年生のある日「カオルさん」と出会った。 彼女は父の仕事上の知り合いで、離婚して一人暮らし中の父の家に来て、 家事などを手伝ってくれているらしい。 初対面でそんなことを知っては、どの様に接していいかわからない。 父が誰と再婚しようが自分には関係のないことだ……そう思っていた矢先、 大事にしていたカヌーのパドルを勝手に取られてしまう。 「返してほしかったら、私と一分だけ話をしてよ」 「ボク」と「ケンジ」が、一人で生きて行くための物語が始まった瞬間だった。
小学校6年生という大人の入り口に立つ「ケンジ」は、 やってみたいことと実際の環境とのギャップや、 周囲の大人からの口出しなどでヤキモキしていました。 そんな時にカオルさんと出会い、感情を揺さぶられてしまいます。 カヌーというスポーツを主人公の拠り所としつつ、大人に振り回されたり、 素直になれなかったり……そんな思春期特有のモヤモヤを描いています。 モヤモヤを解消できるのか、どのように解消するのか…… 筆者は大人の世代のため登場する大人達の同様に、 我が子を見守るように物語を追っていました。 十代の人が観る場合は、全く異なる印象となるかもしれません。 ケンジがパドルを手に漕ぎ出すシーンは、 ストーリーテラーでもあるボクの語りが臨場感を溢れさせていきます。 必死に手を動かすケンジの姿には胸が詰まりますが、 それ以上に応援したい気持ちが高まっていきました。 ケンジの心の叫びと、周囲の人々の関係スピーディに描かれる、 綺麗に収束していく熱のこもったクライマックスだと思います。 少しビターでありながら、懐かしさと、優しさで包まれる気分になれる。 そんな作品でした。
成井豊(なるい ゆたか)さんは、日本の劇作家、演出家で、劇団「キャラメルボックス」の創設者として知られています。1959年生まれ、東京都出身で、早稲田大学第一文学部演劇科を卒業されています。1985年に「キャラメルボックス」を旗揚げし、以来、多くの作品の脚本・演出を手掛けてこられました。
成井さんは、早稲田大学在学中に演劇活動を開始し、1985年に劇団「キャラメルボックス」を結成されました。劇団は、ファンタジーやSF要素を取り入れた作品で人気を博し、日本の演劇界に新風を吹き込んできました。成井さんは、劇団の全作品の脚本・演出を担当し、その独特の世界観と感動的な物語で多くの観客を魅了してきました。
成井さんの作品は、心温まるストーリーと個性的なキャラクターが特徴です。以下に主な作品を挙げます。
成井さんは、その創造性と演劇界への貢献が評価され、以下の賞を受賞されています。
成井さんは、劇団の活動以外にも、他劇団や商業演劇の脚本・演出を手掛けるなど、幅広く活躍されています。また、演劇に関する著書も執筆されており、その経験と知識を後進に伝えています。
(2025年3月現在)