あるドラッグストアに、妊娠検査薬360個まとめ買いの注文が入った。個人だというのに店舗受け取り、かつ現金決済だという。注文者の「アキラ」という名前にざわつくバックヤード。そういう名前の女性だっている、もしかしたら奥さんのかも、いやいやそれにしても数が。様々な憶測が店員同士で交わされた後日、受け取りにやってきたのは四十代の独身男性。検査薬を使用するのは、自分自身であるらしく……。
強烈なインパクトで始まるこの作品には、二本のストーリーラインが見えます。一つは、妊娠検査薬について何かを勘違いしているアキラと、その彼に振り回される店員達。一つ目が目立ちすぎて隠れているもう一つは、古すぎて壊れかけている店舗システム「ジューン」とそれに振り回される登場人物達。二つの要素をトリックスターとして、ドタバタ劇が進んでいきます。
ジューンの機能か何かによって得体の知れない出来事が頻発し、ついにはアキラ達はタイムスリップまで行います。その先で辿り着く解答は衝撃的なものでした。「置いてけぼり」にならないよう、注意深くセリフを聞く必要があります。とはいえ、全体的にテンポとノリ重視の台本なので、ついていけなくてもご愛嬌。愉快なアキラ達の様子をただ見守るのも一興です。
物語というものは、登場人物に「成長」または「変化」が起こって初めて成立すると言います。「フライングチェック」の進行に伴って大きな変化が起きるのは、アキラではなく店舗システムのジューンです。ジューンの老朽化によって各登場人物に何が起きたか、という部分にこそ、作者のメッセージが込められているのかもしれません。
小君良い雰囲気でストーリーが展開していくため、終始ストレスフリーで楽しむことができる作品でした。