オカダコウイチが半年ぶりに帰宅した時、 我が家の壁じゅうに朝顔のツルが張っていた。 困惑しているうちに現れた不動産会社の女の話を聞くと、 「ここは半年前からうちの会社が管理している」と言う。 そんなはずはないと妻に電話をするが、繋がらない。 娘の姿も見当たらない。 不可解な出来事に振り回されながら、 オカダコウイチは少しずつ真相へと近づいていく。
この物語の主人公はオカダコウイチですが、 もう一人の裏側の主人公として彼の妻がいます。 この作品は「奇妙な自宅と翻弄されるオカダコウイチ」、 「妻の独白」の二つのストーリラインで展開されます。 どちらの時系列が先なのか、後なのか、 正解を見え隠れさせながら物語が進みます。 繰り広げられるのは、 家族をあまり顧みないオカダコウイチと、 我の強くない妻との関係の物語。 娘や前の夫の存在も強く関わり、 だんだんと胃が痛くなってきます。 それでも目を背けてしまいたくなることはなく、 じわりじわりと進むストーリーに釘付けになりました。 「朝顔」の特筆すべきは、 台詞や演出に一切の無駄が見られないところでしょう。 ちょっとした言葉や何気ない登場人物の見た目などが、 伏線として収束していきます。 ちょっとした笑いが取れるかもしれないシーンですら、 真相が明かされた途端に単純笑ってはいられないものに ガラリと姿を変えてしまいます。 物語が終わった時に残ったのは、ただ苦しいだけでは済まない、 怒りや、不愉快さや、切なさや、やりきれなさなど、 様々なものが入り乱れたネガティブな感情です。 しかしその一方で、納得感は凄まじいまでにありました。 開幕から終幕まで、 見事な構成で組み立てられた作品だと思います。
第50回岸田國士戯曲賞を受賞。俳優としても活躍しており、ドラマ「半沢直樹」にも出演