舞台は畳で作られたスペース。そこは時に四畳半に、またある時は二十畳へと姿を変える。その畳の置かれた空間で、1987年に行われていた学生運動と、2002年に起きている出来事が、交互に描き出される。その論争の中心にいたナカヤマは、彼を支持する学生たちに向けて「最後の一人までが全体である」という言葉を残す。
過去と現在が交互に行き来する物語です。1987年は大学闘争に明け暮れる若者たちの物語。2002年では、その後に暮らす人たちの様子が語られます。その舞台を象徴するのが四畳半のスペースです。そこを中心として、物語は回っていきます。ただ、登場人物の名前がすべてカタカナであることもあって、少し読みづらさというのはありました。四畳半が登場する場所もコロコロ変わるので、少し物語を追うのも難しいです。 しかし、内容は面白いです。物語の中心である教官ナカヤマは懲戒処分になっているにも関わらず、15年も大学に居座っているという猛者です。そのナカヤマから語られる言葉というのは、現在の価値観からすると理解し難い部分もあります。ですが、その現状を何としても変えたいという泥臭いエネルギーを強く感じました。また、周囲の学生たちの行動も、青春という感じがして胸が熱くなります。 反対に2002年のパートではそのエネルギーは無くなっています。なんとか抗いながらも、社会に飲まれる人たちの姿には、少し寂しさも感じました。しかし、そんな時代でもナカヤマの存在は大きいです。決して褒められた人物とは言えませんが、こういう人間も社会には必要なのだと思いました。
坂手 洋二(さかて ようじ)さんは、日本の劇作家、演出家で、劇団「燐光群(りんこうぐん)」の主宰者です。1958年9月4日、東京都に生まれ、1983年に「燐光群」を結成して以来、社会問題や政治的テーマを扱った作品を多く手掛けてきました。彼の作品は鋭い社会批評と人間描写が特徴で、国内外で高い評価を受けています。
坂手さんは、1983年に劇団「燐光群」を結成し、以降、全作品の脚本と演出を担当されています。彼の作品は戦争、核、環境問題、労働者の権利といった社会的テーマを積極的に取り上げており、観客に強いメッセージを届けています。また、2000年からは「アジアの演劇人ネットワーク」を設立し、アジア各国の演劇人との交流を深めています。
坂手さんの作品は、ドキュメンタリータッチで描かれる現実社会の問題を題材にしたものが多いです。特に、戦争や労働問題をテーマにした作品が高く評価されています。
坂手さんは、その社会性と鋭い批評精神に満ちた作品で数々の賞を受賞されています。
坂手さんは、社会活動にも積極的に取り組んでいます。特に、反戦運動や平和活動、人権擁護に関わる活動を精力的に行っています。また、各地での講演やシンポジウムへの参加を通じて、演劇の力で社会に働きかけ続けています。
(2025年3月現在)