『超人には、人類のために既成の道徳法律を踏み越える権利がある・・・・』 幕末の日本で、そう考える女主人公・三条 英(さんじょう はなぶさ)は、正義のため、高利子の金貸しの老婆を殺してしまうが、偶然そこに居合わせた老婆の妹までも自分の手にかけてしまう。 迫り来る判事から逃げる中、友人の才谷 梅太郎(さいたに うめたろう)は、罪の意識に苛まれ苦しむ英の異変に気づき、その身を案ずるも、彼もまた幕末という歴史の渦に飲み込まれていく。 「ええじゃないか」踊りが江戸市中を埋め尽くすなか、ついに三条 英が心のうちを語り始める・・・・・!
名作ドストエフスキー「罪と罰」をさらに名作にしてしまう野田秀樹の腕に驚愕しました。 野田秀樹『オイル』のときにも思ったのですが、野田秀樹さんは、強い心情を持った女性を描くのがうまいというか、確固たる信念を持ち続けているのに、揺らぐ心というか、確固たる信念を持っているからこそ、そこに矛盾した要素が入ってくると、精神的に不均衡が生じる。というような、通常の葛藤の描き方とはまるで違う葛藤のような気がします。 野田秀樹さん自身、何かのインタビューで、ソ連の崩壊を引き合いに出して、「理想を追い求めていくというような綺麗な姿がなぜ破綻しちゃうのか」野田秀樹『贋作 罪と罰』で言えば、多くの人を救うために金貸しの老婆を殺すという「正義が理論だけに終わって、崩壊していくその姿を書くだけでも、面白いと思った(要約)」というようなことを述べていたようで、着眼点がすごいというか、凡人には思いつかないというか、それでも確かに…と思う言葉でした。 主人公・三条 英の『私はね、自分の罪がわからないの、ぜったいに!一度も!今ほど強く、正しかったと思うことはないわ!』というセリフ。葛藤して追い込まれているのに、『絶対』という言葉を使うこの矛盾した精神。それなのに強く心に突き刺さるものがありました。 ぜひ、読んで見てください。そして、上演してみてください。おすすめです!
野田秀樹(のだ ひでき)さんは、日本の劇作家、演出家、俳優で、多摩美術大学名誉教授、東京芸術劇場芸術監督を務めていらっしゃいます。1955年12月20日、長崎県西彼杵郡崎戸町(現・西海市崎戸町)に生まれ、東京大学在学中に劇団「夢の遊眠社」を結成し、日本の演劇界に多大な影響を与えてきました。
野田さんは、東京大学在学中の1976年に劇団「夢の遊眠社」を結成し、数々の話題作を上演して演劇界に大きな影響を与えました。1992年に劇団を解散後、イギリスに留学し、帰国後の1993年に「NODA・MAP」を設立。以降、『キル』『パンドラの鐘』『THE BEE』など、次々と話題作を発表されています。2009年7月には東京芸術劇場の芸術監督に就任し、多摩美術大学の教授も務められています。
野田さんの作品は、独特の言葉遊びやリズム感、社会風刺を取り入れた作風が特徴で、国内外で高い評価を受けています。
野田さんは、その革新的な演劇活動が評価され、多くの賞を受賞されています。
野田さんは、オペラの演出や国際的な共同制作にも積極的に取り組んでおり、フランス国立シャイヨー劇場をはじめ、国際フェスティバルなどでも上演を行っています。また、英国やタイ、韓国の演劇人との国際共同制作にも積極的に取り組み、世界を駆け巡り、意欲的に活動されています。
(2025年3月現在)