時は昭和五年。プロレタリア文学の旗手である小林多喜二は特高警察にとらえられてしまい、拷問を受けていた。特高警察は言葉巧みに多喜二を尋問していく。その後釈放されるも、多喜二は活動をやめることなかった。そして妻の伊藤ふじ子や妹たちと協力しながら、危機を乗り越えていく。だが特高警察はそんな多喜二を徐々に追い詰めていく。
組曲虐殺という物騒なタイトルの作品ですが、内容はコメディよりなので安心して読めます。特高警察の古橋と山本は職務を真面目に遂行しているように見えて、間抜けなミスをしたり、変装にまんまと引っかかったりするなど、どこかに憎めないキャラになっています。特に山本が自分で小説を書いて、それを多喜二に読ませるシーンが好きです。その小説を真面目に読む多喜二も面白いです。そのシーンで語られる「かけがえのない光景」の話もとても印象に残ります。 ただ、すべてコメディな訳ではなく、作中には虐げられる労働者の姿も描かれています。そしてその人たちの状況を少しでも改善しようとする多喜二たちの頑張りには思わず応援をしたくなってしまいます。 結果的に多喜二は史実と同じ末路を遂げるのですが、そこには悲惨さはあまりありません。多喜二の物語は終わりましたが、他の人たちの物語は続いていくのだと感じました。