おもちゃ会社立花トーイ。ゴドーを待ちながら。私が私である世界。この三つの場面を行き来しながら、それぞれの人物の人生や人々が本当に望むおもちゃを模索する。混ざり合う三つの世界の物語の中で哲学的なやり取りが繰り広げられていく。
とにかくハチャメチャな戯曲です。場面展開は多く、少々混乱してしまう部分もあります。しかし非常に笑えるギャグと、政治的なブラックユーモアに、過激な下ネタが現れては消えていくので非常に楽しいです。とにかく嵐のように次々と色々な出来事が起きます。キャラクターも世界が変わるたびに姿を変えます。ですがそれぞれに特徴があり、とても生き生きと動き回ります。繰り返されるギャグの中にも、現代社会の閉塞感や、人生に対する苦しみが描かれています。読んでいてどこまでが現実なのか、どこまでが物語なのかがわからなくなる不思議な作品です。ト書きの指示も豊富に書かれているので、戯曲を読むだけでなく、実際の上演された劇を見てみたいと思いました。
鴻上 尚史(こうかみ しょうじ)さんは、愛媛県生まれの劇団劇作家・演出家です。 早稲田大学演劇研究会出身で、在学中に劇団「第三舞台」を旗揚げし、高い評価を受けました。 現在(2020年)、日本劇作家協会会長(代表理事)も務めています。 テレビやラジオなどにも出演しており、テレビ朝日系列の『トリック』や映画『就職戦線異状なし』にも出演。 M-1グランプリの最初の審査員も務めました。 2008年に「虚構の劇団」を旗揚げし、活動中。 鴻上尚史さんの出版した本「発声と身体のレッスン」は演劇の枠を超えて、声優、アナウンサーなど幅広い分野で人気になっています。