山崎県の海沿いにある古い老人ホーム。そこには認知症を患った老女たちが暮らしている。しかし実は彼女たちは若いころ同じ劇団に所属していた。ある劇作家が未完成で終わらせた劇を完成せるべく、長い年月をかけて病と闘いながら稽古を続けているのだ。残された時間を気にしながらも、子供たちの協力で劇はやがて完成に近づいていく。
この物語では回想シーンと現実シーンとが入り乱れながら進行していきます。作中の風景描写とも相まって、どこか懐かしい幻想的な雰囲気が漂っているので、とてもノスタルジックな気分になります。ですが登場人物が抱えている悩みはとても現実的で、読んでいて少し胸が苦しくなります。それぞれの言い分は理解できるので、誰が悪いとかそういうことは判断ができません。そういった面でもリアリティがあるので、より物語の世界に入り込めます。 そして何と言っても、稽古するおばあちゃんたちの力強さには元気が出ます。老いと病のせいで本領を発揮できませんが、それでも劇を完成させるという執念を感じられます。物語が進むにつれて、なぜ劇を続けるのかがわかっていきます。事情がわかると、よりこの劇を完成させて欲しいという気持ちになります。年齢に関係なく目標を持ち続けることの大切さを教えてくれる作品だと思います。
日本劇作家協会会長。「ゲゲゲのげ 逢魔が時に揺れるブランコ」で岸田國士戯曲賞。幼少期から演劇に興味をもち、学生時代に演劇部に所属。女優としてドラマや映画で活躍する傍ら劇作家や演出家としても活躍。