鈴木卓也は自らの過ちにより、仕事を失ってしまう。それが原因で母は死に、妻からは離婚を迫られる。さらに、認知症の父の世話をするという人生を送っている。しかしある時突然、父は脱皮して若返る。それを繰り返していくうちに、卓也は様々な世代の父と、親子の対話をしていく。
主人公の鈴木卓也がとにかくダメ人間です。そのことを妻の美津子からは優しい人と皮肉られます。事実、離婚届の判を言い訳ばかりして押さないばかりか、すきを見てゴミ箱に捨てたり、久々にあった昔の彼女と関係を持ったりします。挙句の果てに、問題を起こして仕事をクビになります。こんなダメな主人公ですが、何となく自分にも思い当たる節があったため、妙に共感してしまいました。 父親も脱皮して若返ることにより、元気になっていきます。最初こそは父親として卓也に説教をしたりするなど、威厳を見せていましたが、若くなるたびにどんどん未熟な人物に変化していきます。そしてそんな父と対話するたびに、新たな事実や今まで言えなかったことを話したりするなど、実に奇妙な形で親子の絆を深めていきます。若返るたびに予測不能な問題を起こす父親が、とてもいいキャラをしているので読んでいてとても楽しいです。 結局、若返りはある段階で止まり、物語も終わります。その終わり方には祭りの後の静けさのような寂しさを感じます。もし、万が一自分の両親が脱皮をして、若くなっていくなら、私はいったいどんな会話をするのか。そんなことを考えさせられる、とても素晴らしい作品です。
第50回岸田國士戯曲賞を受賞。俳優としても活躍しており、ドラマ「半沢直樹」にも出演