ナチス政権下、ベルリン。 平凡で善良な一般市民・ハロルドは小学校の歴史教師。 ある時友人ペーターに、歴史の知識を生かしてSSに入隊することを勧められ…。 戦前から戦後まで、ある一般的な家庭を通して移り変わる人々の姿を描く。
ユダヤ人の友人や、障碍のある友人を持ち、SSになっても彼らへの思いや気遣いは変わらないハロルド。 そんな善良な心のまま、何も変わっていないつもりのままで、ハロルドは強制収容所で没収されたユダヤ人の財産管理を運用する仕事に就きます。 本当は知っているはずなのに、わかっているはずなのに。 ドイツの敗北が近づくほどに、ナチス政権へ傾倒していく家族。 「あなたは何も変わってないはずなのに、いつの間にかSSの歯車となって、ナチスの作り出した恐ろしい国家の一部になってしまった」 何も変わらない善良な人間のままでいても、信じるものは、社会は変わっていく。 「ここで生きていかなきゃいけない以上、抗うよりも先に、受け入れていった方がいい。」 戦後、社会主義を学びながら、自分たちは何も知らなかったと話す彼らは、それでもやはり善良な人でしかないのだと悲しく感じる作品でした。