女の家にやってきた女友達の客。 女は、奥から鞄を取り出し、客に見せ、鍵を開けて中身を確かめてほしいと頼む。 その鞄は、女の主人いわく「先祖」だという。 ときおり物音やうめき声が聞こえるその鞄を目の前に二人はうろたえる…
この『鞄』という作品は、「棒になった男」というオムニバス形式の戯曲の一部になります。
「棒になった男」は、『鞄』『時の崖』『棒になった男』の全3景により構成されています。
内容はそれぞれ独立しているため、『鞄』単体で上演されることもしばしばあります。
"鞄"役の是非
安部公房は、鞄役について実際の人間を用いて上演しましたが、別役実はこの演出方法について、
「"古くさいすり切れた鞄そのものが、人間に見えてくるかどうか、と云う点に全てが支払わなければならない"」「"この演劇的な装置から云ってそれは致命的な間違いなのだ"」と言って、安部公房の文学的な意味付けの過剰さを批判しています。
(別役実『ことばの創り方』https://amzn.to/2TDTUqZ より抜粋、引用。)
安部公房の文学的な巧みさと、別役実の演劇性へのこだわり、どちらが正しいかは置いておいて、このような視点でこの作品を見てみるのもよいのではないでしょうか。